このタイトル、この表紙、いったいどんな小説なんだろう?と興味津々で読み始めた。綿矢りさは「蹴りたい背中」「ひらいて」「大地のゲーム」を読んだけれど最近はあまり手に取ることがなかった。で、「オーラの発表会」、いやいやいや、綿矢りさ、ここまで進化?していたのか!ビックリ!
物語の最初からかなり驚いた。主人公の海松子(みるこ)のキャラがかなりユニークなのだ。話し方も癖があるし、基本的に1人でいることはまったく平気で、友だちもほとんどいない。高校までは服のコーディネートなどもすべて母親まかせだった。個性的ではあるけれど周りからみれば孤高の人のイメージでちょっとヘン!ただ孤独を好むとか人嫌いとかではないところがユニークだし、読んでる側からすれば彼女をキュートにさえ感じたりするのだ。
そんな海松子、大学入学と同時に一人暮らしを始めるのだが、実はこの独立、親が決めたものだった。なぜ??唯一の友で性格は真逆なのにヘンに気が合うまね師こと萌音、幼馴染の七光殿こと奏樹、父の教え子であるサワクリ兄こと諏訪、彼らとの友情や恋のエピソードを通して、海松子のいろいろが次第次第に分かってくる。なぜ、両親が独立を勧めたのかも。萌音、奏樹との南の島への旅が印象的だ。後半、彼女が自分のオーラ?に目覚めるあたりは村田沙耶香や川上弘美ワールドを彷彿させるが次第に作者の意図も分かってくる。
これを海松子のような人間が「自らを見つめ直し、他人との新しい関係を築いていく物語」と言っちゃうのは簡単だけど、なんだかちょっと違う気もする。「一人で足りすぎている」女の子の物語は想像以上に奥深い。ラストの多摩川での連凧のシーンが強く心に残った。 ◆DATA 綿矢りさ「オーラの発表会」(集英社)1400円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
私は、一人で足りすぎている。
足りちゃいけないところまで
足りているんだと思います。
◯この本は2024年6月、集英社文庫で文庫化されました。
◯綿矢りさ、その他の本の書評はこちらから
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