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【書評】吉田修一「さよなら渓谷」-その「過去」があったからこそ、2人は互いを必要とした

 

さよなら渓谷 (新潮文庫) さよなら渓谷 (新潮文庫)
吉田 修一

新潮社 2010-11
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これはすごい小説だ。しかし、紹介するのが難しい。これから読む人のことを考えると一番核心の部分に触れるべきかどうか非常に迷う。でも、映画の予告編ではこのことに触れていたしなぁ。新刊ならば、たぶん書かないのだけど、ここでは「それ」をあえて書くことにする。

 

 この小説、書き出しが巧い。桂川渓谷という緑豊かな土地で起こった幼児殺人事件。実の母である里美に疑いがかかる。その静かな町にレポーターたちが押し寄せる。しかし、この物語の主人公は彼女ではない。隣家の夫婦、尾崎俊介とかなこ、「さよなら渓谷」はこの2人の物語だ。

 

 2人の間には、数十年前、ある事件があった。その事件を経て、彼らは今、共に暮らしている。幼児殺人を取材に来ていた山崎という男が、偶然にも「そのこと」に気がつき、すべてを知ることになる。この山崎という男の存在もこの物語ではとても大きい。

 

 2人は共に、忘れることのできない過去を背負って生きてきた。かなこは誰からも許されない。俊介はまわりの男たちから簡単に許された。許されたい女と許されないことを望む男、だからこそ、というか、だから、彼らは互いを必要としたのだ。その悲しさ、その絶望!これを究極の愛などとは言えない。ただただ、この物語を書いた吉田修一をすごいと思うばかりだ。まさに、作者渾身の一冊。深い余韻を残すラストに心を打たれた。

 

◯吉田修一のその他の本のレビュー等はこちら

 

 

 2014.4.30 今日、東京は雨。あ、4月ももう終わりだ。読書は朝井リョウの「スペードの3」がもうすぐ終わりそう。次は村上春樹の新作、かな。

 

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