フランスを中心に欧州でも人気があるコミック作家谷口ジロー。これは彼のファンならば絶対に持っておきたい、平凡社のビジュアルブックシリーズ「コロナ・ブックス」から出た一冊だ。
前半は「原画ギャラリー」と題して、亡くなるまでの彼の活躍を3期に分けて紹介している。これ、まさに「原画」で、フキダシに写植がそのまま貼ってあったり、鉛筆での様々な書き込みなどもあって見ていてとても楽しい。もちろん、彼の絵のすごさも堪能できる。所々に入っているエッセイも多彩で中身が濃い。原田宗典、久住昌之、夢枕獏、川上弘美の「原作者より」、夏目房之介らの「論考」、竹中直人ほかの「私と”谷口ジロー”」、短いながらも読み応えがある文章が収録されている。
特に心惹かれるのが「谷口ジローはもっと評価されねばならない」というタイトルの夏目房之介の論考だ。物語マンガBD(バンド・デシネ=絵の帯)としてフランスやスペイン、イタリアで評価されたこと。それは、知的な大人の「グラフィック・ノベル」としてのものだったこと、などなど谷口漫画が世界を魅了する理由がしっかりと分かる。人となりが伝わる松本大洋のインタビューもいい。
さらに、谷口さんの本棚の完全リスト化、仕事場の図解、略年譜、発表作品の初出誌&単行本データと至れり尽くせりの内容。巻末には幻のデビュー作「声にならない鳥のうた」まで収録されている。ううむ、これは本当にすごいぞ!コロナ・ブックス、えらいっ!
◯谷口ジローのコミックの感想や情報はこちらから
2018.12.16 ちょっとうれしいことなどがあり、浮かれてる。読書は宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」。
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