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【書評】朝井リョウ「どうしても生きてる」-ここで描かれているのは今の時代のどうしようもない生きづらさだ

 朝井リョウ「どうしても生きてる」

 

 6つの物語からなる短編集。コンセプトがハッキリしていてかなり中身が濃い。どれも今を生きている人々の心にストレートに届く物語だ。朝井リョウはデビュー作からずっと読んでいるが前作「死にがいを求めて生きている」前後から、人間を見つめるその深度が増してきている。これからさらに目が離せない作家になるだろう。

 

 どれも心をえぐる物語だけど「いつだって少しだけ死にたいように」「いつだって少しだけ生きたい自分がいる」と主人公の女性が語る「健やかな論理」はまさにこの小説集の冒頭を飾るにふさわしい話だ。彼女はネットのニュースで見かけた死亡者の身元をSNSで特定することを趣味にしている。なぜ彼女はそんなことを続けているのか?

 

  最後の2作。「そんなの痛いに決まってる」は結婚当時は仕事も収入も妻より上だったが転職後うまくいかず、逆転されたことでセフレに逃げてしまう男の話。最後の「籤(くじ)」は演劇などのホールのフロア長を務める女性が出生前診断を受けたことで夫との関係が崩壊していく物語。診断は陽性、彼女は人生でずっと外れ籤をひき続けてきたと思っている。「これまでみたいに、不安で不安でたまらないまま、大丈夫になるまでどうせまた生きるしかない」と語る主人公。その開き直りのような言葉の中に僅かながらの希望を感じる、この短編集の掉尾を飾るにふさわしい話だ。これはまるで角田光代が書いたような物語。

 

 ここに登場する主人公たちは、今の自分に違和感を感じながらどうすることもできず、毎日をやり過ごすように生きている。どこかで間違ってしまった人生、理想とはかけ離れた仕事、SNSに支配してされてるような日常の中でのどうしようもない生きづらさ。これら諸々が「どうしても生きてる」というタイトルに繋がっていく。ここにはまさに現代がある。あなたはどの主人公に共感するのだろう?

DATA◆朝井リョウ「どうしても生きてる」(幻冬社)1,600円(税別)

 

 ◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

生きていくしか、

生きていけない。

 

2020.1.8 さて、新しい年。今年はどんな物語に出会えるのだろう?期待!読書は小野不由美「白銀の墟 玄の月」3巻目。

 

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