いやぁ、これはスッゲー。スッゲーから読むしかないっ!ってことで書評を終わりにしたいぐらいスッゲー。
5つの物語。表題作「アンソーシャルディスタンス 」と「テクノブレイク」はコロナ禍の中での話。個人的にはその2つよりあとの3つの方が印象は強烈だった。冒頭の「ストロングゼロ」の主人公は恋人が心を病み、一緒に住む彼女自身も酒と単純なパズルゲームしか受け付けなくなってしまう。職場の若い男と交際を続ける「デベッカー」の主人公は老いと劣化への不安に苛まれプチ整形を繰り返す。「コンスキエンティア」では夫から逃げ出し不倫に走ったが相手も心を病み、もう1人の若者にも翻弄される主人公の姿が描かれる。すべてが関係性の中でいっぱいいっぱいになっている女と男の話だ。そのいっぱいいっぱい感がなんだかスゴい。いろいろな思いがグルグルグルと頭の中を駆け巡る。
コロナ禍の話は読んでもらうとして、そうではない3話もそこにあるのは「コロナの時代のリアル」だ。その渦中にはいるけれど、さすがにこの主人公たちとは年齢的に大きな差がある自分も確かなリアルを感じることができる。恋人や他者との関係がなんだかおかしくなっちゃってる。なんのための恋なのか、なんのためのセックスなのか、なんのための私とあなたなのか?その関係を問い直さずにはいられない破壊力いっぱいの作品集。金原ひとみ、すごし!!!!!
◆DATA 金原ひとみ「アンソーシャルディスタンス 」(新潮社)1700円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
つながってるのか、つながってないのか
つながりたいのか、つながりたくないのか。
◯この本は2024年1月に文庫化されました。
◯金原ひとみさん「マザーズ」の感想はこちら
2021.8.4 暑い。コロナ。東京。五輪。読書は石田ゆり子「ハニオ日記 2016-2017」が終わりそう。そのまま「ハニオ日記 2018-2019」