ノーベル賞の山中伸弥博士、将棋の藤井聡太四冠、この2人の対談、読みたくない人なんていないんじゃないか。いろいろおもしろいのだけど、僕は2ヵ所、思わず声が出た。一つは藤井四冠が「詰将棋は自分にとっては趣味なのかなと思っています。」と言い放ったところ。「将棋の観戦と詰将棋は、捉え方としては将棋の勉強というよりは、ひとつの趣味という部分が大きい気がします。」とも言ってる。いやいやいや、それ言わないでしょう?う〜ん、この意識はなんかスゴイなぁ。桂文枝(お疲れ様!)みたいに椅子から転げ落ちそうになった。
もう一つは羽生さんの話から始まったAIのこと。棋士にはなぜか「ここに指したくなる」「ここに指さないと気持ち悪い」という美意識みたいなのがある、という話から始まって「AIはものすごく気持ち悪い手を平気で指してくる」と続くくだり。棋士のその美意識っていうのがすごくおもしろかった。それはなんとなくだけど分かるなぁ。後半はAIの話が多く、これ以外にも興味深い話が続く。
全体を通して感じるのは藤井四冠のクレバーさ。山中博士の質問に非常に的確に答えているし、諸事情にも通じている。山中博士は藤井四冠相手というのもあるのだろうけれど、変に難しいことを言ったり、難しい言葉を使ったりもせず、僕ごときが言うのもなんだけど人間が素晴らしい感じ。アメリカの科学者がとても明るいこと、医療があまりにもビジネス化されていることへの警鐘など気になる発言も多かった。構成・編集がちょっと雑な感じがして残念。
◆DATA 山中伸弥・藤井聡太「挑戦 常識のブレーキをはずせ」 1400円(税別)講談社
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
山中伸弥×藤井聡太
今一番読みたい対談が
本になった。
◯この本は2023年9月、講談社文庫から「前人未到」と改題されて発売になりました。
2022.2.9 ううむ、高梨沙羅さんさん。あまり自分を責めないで!!読書は金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」。
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