かなり話題だったけどなかなか読めないでいた一穂ミチの短編集、やっと読んだ。一穂さんはBL(ボーイズラブ)小説界の鬼才でこの「スモールワールズ」は一般文芸書では初の単行本らしい。まぁ、BL小説と一般文芸書を分けてもしょうがないと僕は思ったりするけれど。
直木賞候補にもなったこの本の後に、彼女は「パラソルでパラシュート」という長編小説を出し、今年2月には山本周五郎賞にもノミネートされた「砂嵐に星屑」という連作短編集を出している。
さて「スモールワールズ」、6つの短編を読めば彼女の力量がすば抜けていることがすぐに分かる。どれもが際立った出来。構成の妙があり、完成度が高い。「家族」というテーマは一致しているけれど、表現もその結末も多彩だ。
豪快で戦国武将のような姉が離婚するといって実家に戻ってくる「魔王の帰還」、弟とその同級生の少女との交流が楽しいが、その分、後半で明かされる思いがけない事実と姉が背負っているものが心に迫る。ラストの一行、かっこいい。孫の誕生を喜ぶ祖母と娘の「ピクニック」という話。ジワジワと怖さが押し寄せてきて、最後の数行でたまらなくなる。いやいやいや、怖いなぁ。圧巻は刑務所の内と外で手紙のやり取りをする男女の話「花うた」。最初のやり取りで「これは!」と思うのだが、展開はこちらの予想をはるかに越えて、さらに思いがけないところに着地する。ううむ、と唸るばかり。
巧妙というのはこういうストーリーのことをいうのだろう。登場人物が少しずつつながっていたり、構成にも工夫がある。でも、巧いだけじゃない。6つの短編を通して描かれているのは、家族というスモールワールド。外側からはうかがい知れない思いがけない世界がそこにはあり、様々な感情が渦巻いている。その感情の表出が読む者の心を捉えて離さないのだ。一穂ミチ、恐るべし。他の小説も読まなければ!
豪快で戦国武将のような姉が離婚するといって実家に戻ってくる「魔王の帰還」、弟とその同級生の少女との交流が楽しいが、その分、後半で明かされる思いがけない事実と姉が背負っているものが心に迫る。ラストの一行、かっこいい。孫の誕生を喜ぶ祖母と娘の「ピクニック」という話。ジワジワと怖さが押し寄せてきて、最後の数行でたまらなくなる。いやいやいや、怖いなぁ。圧巻は刑務所の内と外で手紙のやり取りをする男女の話「花うた」。最初のやり取りで「これは!」と思うのだが、展開はこちらの予想をはるかに越えて、さらに思いがけないところに着地する。ううむ、と唸るばかり。
巧妙というのはこういうストーリーのことをいうのだろう。登場人物が少しずつつながっていたり、構成にも工夫がある。でも、巧いだけじゃない。6つの短編を通して描かれているのは、家族というスモールワールド。外側からはうかがい知れない思いがけない世界がそこにはあり、様々な感情が渦巻いている。その感情の表出が読む者の心を捉えて離さないのだ。一穂ミチ、恐るべし。他の小説も読まなければ!
◆DATA 一穂ミチ「スモールワールズ」(講談社)1500円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
小さな世界で生きている、
小さな世界がつながってる。