「三島屋変調百物語」の9巻目。表題作を含めて4つの物語が収録されている。聞き手がおちかから三島屋次男の富次郎に変わって4冊目。宮部みゆきの巧さは変わらず、導入部など特に巧い。
今回は全体の背景とになる2つの事がある。一つはおちかが産み月を迎えようとしていること。それに関連している物語が表題作の「青瓜不動」だ。おちかの大事な時だからこそ、と休んでいた変わり百物語に新しい語り手を招く富治郎。やって来たのは「うりんぼ様」というお不動様を背負った女。彼女の語る不思議な話、そして、三島屋にそのまま残されたうりんぼ様の前で起こる奇妙な出来事。おちかは無事に出産を迎える!このシンクロ具合がなんともおもしろい。
もう一つは聞き手である富治郎自身の苦悩だ。3話「自在の筆」は人に才を与え、衰えてしまった才をも蘇らせる筆の話。その筆に魅せられた絵師とその代償として周囲
の人々に起こること。この物語は絵師に憧れていた富次郎に大きな決断をさせる。個人的には一番好きな「針雨の里」、そのラストで富次郎はまた別の決断をする。「針雨の里」はまさに「命」の物語。最後に明らかになる村の秘密が富次郎の心を強く打ち、新たな決意を固めるのだ。おちかの出産と富次郎の描くことへの苦悩、この2つが物語に大きな厚みを与えている。
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)
子は宝だ。この世の畑の尊い実りだ。
ありがたい、ありがたい。
◯宮部みゆき 、他の本の書評などはこちら!!
2023.11.22 なんだか分からないがバタバタしてるな。何のせいだ?アレか!読書、川上弘美「恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ」が終わったところ。
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