すみません、これが初めての西加奈子小説です。アレもアレもアレも読んでない。ノンフィクションの「くもをさがす」は読みました。読んで小説も読まなあかん、と思いこの短編集を手に取った次第。ま、最新のやつなので。
8つの物語が収録されていますが、一番感心したのはそれぞれのラスト!どの話もラストがめちゃくちゃカッコいい。「VIO」の「小さなパンツを、大きなパンツに替えるだけで良かったのだ」なんて、サイコー!分かんないですよね?いやいや、読んだら分かります。いいんです。ラストがビシッと決まるのはすべてがまさに最後のフレーズに向かって突き進んでいる物語だから。「くもをさがす」では彼女が乳がんになり、バンクーバーで両乳房を全摘した時のことが書かれているのだが、その経験がこの短編集の核になっているような気がする。女性を主人公にした、女性の心と体をそのど真ん中に置いた8ストーリーズ!
どれもいいので選んで語るのは難しいのだけど、たとえば「あなたの中から」、これは代々区議会議員だった家に生まれ「なんだ、女か」と祖父に言われた「あなた」の話。そんな状況に反発するように豊胸など整形を繰り返し、ヤリマンと言われるようになり、それでもうまいこと一流会社に入り優秀な男と結婚した彼女がガンになり、ようやく自分の体を自分に取り戻していく話。たとえば「VIO」は隠毛の脱毛の話。ガールズバーに務める主人公の「私」はレーザー照射された瞬間からどんどん変わりはじめ、政治的になり、同僚達や客までも巻き込み、なんだかどんどんと自由に近づいていく。このラストが前述のアレだ。後の6話もいいのよ。最後のデリヘル嬢の…いや、もうヤメておこう。
とにかくここに収録された話は、女性たちをいろんなことから解放し、戦う勇気が湧いてくる、そんな物語ばかりだ。ううむ、西加奈子、すごいぞ。今まで読まなかったのは間違いだったなぁ。 ◆DATA 西加奈子「わたしに会いたい」(集英社)