表紙の絵に強く惹かれた。描いたnakabanさんは画家で新潮社「とんぼの本」シリーズのマークを作った人だ。文章を書いた内田麟太郎さんは詩人で2人とも絵本も多く出している。ううむ、読んだことないなぁ。ちょっと読みたいぞ。
さて、「ひとのなみだ」。最初の見開き「だいとうりょうが さけぶ せんそうが はじまる でも ぼくは いかない いくのはロボットのへいたい」という文章、さらに次の見開きでは「ロボットを かえない ちいさな国へ ドローンを かえない とおくのくにへ せめていく」と続いていく。次のページはゲームのビジュアルで手前にコントローラーを握った手が描かれている。一瞬ゲームの話かと思うのだがもちろんそうではない。
「ひとではなく すうじを かちつづける すうじを わくわくする すうじだけを テレビは それだけを ながした」。ダークで凄みを感じる絵が素晴らしい。後半になってテレビに実際の戦場の姿が映し出される。誰かが密かに流出させたのだ。「おかあさんを よぶ こどものこえが きこえてきた こどもを よぶ ははのこえが きこえてきた 」。よみがえる幼い頃の記憶、そして…。最後の数ページの力強さ!涙を浮かべた子供の顔が描かれた最後の1枚!これはデジタル時代の戦争とそのリアルを描いて力強い反戦の1冊だ。内田さんの最後の一文もいい。
◆DATA 内田麟太郎:文 nakaban:絵「ひとのなみだ」(童心社)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)