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【書評】宮島未奈「婚活マエストロ」-40歳のしがないウェブライターが婚活ワールドに出会った!!


 「成瀬」シリーズで本屋大賞に輝いた宮島未奈のデビュー3作目。この人の小説は読みやすい。読みやすい、と簡単に書いたけれど、何というか独特のテイストがあってその文体が全体を支えている。

 タイトルから男性の話なのかと思ってたら表紙は女性。本文にもちゃんと書いてあるが婚活マエストロと呼ばれているのは婚活会社「ドリーム・ハピネス・プランニング」で働く鏡原さんという女性なのだ。しかし、主人公は彼女じゃない。40歳のしがないウェブライター猪名川健人。彼が大家さんを通して仕事を頼まれたのが鏡原さんのいる会社だったのだ。猪名川はホームページ作成のために婚活パーティーに参加したり、そのスタッフを臨時でつとめたり、婚活バスツアーの一員になったりする。パーティーやツアーのことが具体的に分かってなかなか楽しい。この話の舞台は浜松なのだが、ツアーの行き先が琵琶湖で「成瀬」で出て来た観光船ミシガンまで出て来て笑った。

 主人公はそれまで人と話すことも少なく、ひきこもり的な暮らしだったのだが婚活ワールドに接することで大きく変わっていく。婚活界隈にはユニークな人も多く、人との交流を通して彼もその輪の中に入り、意外な才能があることにも気がつく。さらに、同い歳で不思議な能力もある鏡原さんとの間には…。40歳からでも人は変われる、そんな思いを感じることができる物語だ。これはまたまた2がありそう。2では猪名川が「マエストロ」になっちゃうんじゃないか、というのは穿ち過ぎか?

◆DATA  宮島未奈「婚活マエストロ」(文藝春秋)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)