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【書評】宮島未奈「成瀬は信じた道を行く」ーこれもしかしたら本屋大賞受賞の前作「成瀬は天下を取りにいく」より格段いいんじゃないか?

 

 先月発表された本屋大賞で大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」の続編。しかし、うううむ、これは驚いた。前作よりもこっちの方が格段におもしろいじゃないか!これなら2年連続本屋大賞も夢じゃないぞ。

 今回は高校を卒業した成瀬の大学生活で起こる諸々を描いた話かと思ったがそうではなかった。全体は全5話。語り手も前作同様1話ずつ変わっている。このスタイルが成瀬の個性を浮き彫りにするのに功を奏している。小4の女の子が語り手になる1話、成瀬の父が語り手で彼女が大学合格する2話。成瀬がバイトしてるスーパーのクレーマーが語る3話、どれもおもしろいが、後半の4、5話が特によく出来ている。大学の合格発表を待っている時期の成瀬がびわ湖大津観光大使に選ばれる4話はもう1人の大使・篠原かれんが語り手。祖母も母も大使というええトコのお嬢様が成瀬にいつ間にか感化され、自分の好きな道を歩もうと思い始める展開がいい。

 

 ラストの語り手は成瀬の漫才の相手役・島崎みゆきだ。書き置きを残し急にみんなの前から消えてしまった成瀬。父はもちろん今までの語り手たちが総出で彼女を探す。その捜索行が楽しいと共にみゆきが父親同様に成瀬の喪失を恐れていることに気づく場面がいい。「もしかしたらわたしは、成瀬に置いていかれたくなくて、自から膳所を離
れたのかもしれない」と自分に問う東京暮らしのみゆきの言葉が心に残る。物語はとんでもない大団円と共に幕を閉じるが、この本は成瀬の魅力を語り手たちが浮き彫りにしていくと同時に、語り手が自らを見つめ直していくという自己発見の物語になっているところが素晴らしい。当然、次回作にも期待!!
◆DATA 宮島未奈「成瀬は信じた道を行く」(新潮社)

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)


◇本屋大賞受賞!「成瀬は天下を取りにいく」の僕の書評はこちら!

 

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