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【書評】伊集院静「海峡」「春雷」「岬へ」-圧倒的な物語の力!読み出したらやめられない、力強い成長物語

 伊集院静の自伝的三部作、「海峡」「春雷」「岬へ」、すでに3冊とも文庫になっている。ちょっと分厚い物語なので遅読の自分は少々ビビる。でも、読みたい!よしっと思い読み始めたら、これがもう「巻をおくことあたわず、寝食を忘る」のおもしろさ。力強い物語で、ガシガシガシとむさぼり読んだ。

 

 瀬戸内の小さな港町で生まれ育った高木英雄の成長物語。小学生の頃から東京に出た大学時代までが描かれているが、僕は何と言っても故郷を舞台にした「海峡」と「春雷」が好きだ。その小さな町で英雄は友情を育て、淡い恋をし、野球のライバルに出会い、弟との絆を深め、父への反発を強めていく。父、斉次郎は、その昔、海を越え半島から日本にやって来た男で、舞台となる小さな港町で、土木工事等の口入れ業から飲食店まで手広く営んでいる。家の敷地内には従業員たちはもちろんのこと、なぜかいろいろな国籍の人間が住んでおり、町の人々はその家を「高木の家」と呼び、恐れ、どこかで蔑んでいる。その中心にどっしりと「在る」のが家長の斉次郎なのだ。周りの者は、英雄が家を継ぐことを当然のことと思い、大きな期待を寄せている。そのことへの強い反発が、英雄にはいつもある。悩み傷つきながらも、彼は自分の行くべき道を追い求めていくのだ。

 

 家族を含め英雄の周りにいる人々の造形が素晴らしいことが、この3部作を特別なものにしている。3巻『岬へ』で語られる、弟との物語、父との物語は涙なしでは読むことができない。

 

 長友啓典がデザインした文庫の装幀がなんともいえずいい。色合いも美しく、3冊並ぶとなんだかうれしくなってしまう。

 

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