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【スポーツ/書評】伊集院静「逆風に立つ」-伊集院静、松井秀喜にメロメロになる!

 今日、というか昨日の深夜、ヤンキースタジアムで松井の引退式が行われた。僕はワイドショーの映像を見ただけだが、伊集院夫妻はきっとテレビにかじりついて、この異例ともいうべきセレモニーに拍手を送ったに違いない(いや、スタジアムに行ったかも)。伊集院静という人は作家としてだけではなく、人間としても魅力的な男だ。それは彼が書いたものを読むだけでわかる。「松井秀喜の美しい生き方」というサブタイトルが付いたこの「逆風に立つ」という本は、平ったく言ってしまえば、そんな作者が松井秀喜という人間にメロメロになっちゃった、という話だ。男が男に惚れる、ってことですかね。

 

 引退会見をする、という松井の電話から物語は始まる。そして、ヤンキースタジアムでのデビュー戦へと過去に遡っていく。そんな回想の中で、彼と彼の妻、さらにはニューヨーカーたちがなぜこれほどまでに松井を愛し、ファンになっていったかが語られる。

 

 伊集院と松井が会ったのは雑誌の企画だ。「(松井選手が)あなたと話ができるなら対談に出てもいい」と言っている、という電話が編集者からかかってきたのだ。松井は「あなたの本を読んでいて、ファンだ」と言う。伊集院は驚いた。小説を読むプロ野球選手がいるのか?すべてはそこからスタートした。作者は会った時からこの若者に魅了され、本を送る約束までしてしまう。その後、松井という人間の謙虚さに驚き、しだいにその人間性に惹かれていくのだ。大リーグでは大きな怪我をした。逆風に立ちながらもそれを平然と受け止め、克服した松井の姿に、大きな拍手を送っている。

 

 贔屓目で書いてる感じがさほどしないのは、僕ら一介のプロ野球ファンから見ても松井という男はまさにそういう男だからだろう。いずれにしてもここには等身大の「松井秀喜」が描かれている。本文中に野球をやめたらコーチや監督になるのかと聞かれ、彼は「そうはしないと思う」と答えているのだけど、どうなのだろう?監督松井も見たいような気もするし、何か違うことをするのもいいような気もするが。

 

※この本は2007年3月ランダムハウス講談社から刊行された「MODESTY松井秀喜 つつしみ深い生き方」を加筆・修正し、再編集したものです。

 

◯伊集院静のその他の本のレビューはこちら 

 

 

2013.7.29 今日は一日雨かな?山口や島根は大変だったようですが…。雨は恐い。読書は仁科邦男「犬の伊勢参り」。

 

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