また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【コミック】「ダルちゃん」はるな檸檬×矢部太郎、CanCam対談、必読です!!!

 先日、このブログで紹介したはるな檸檬さんの「ダルちゃん」。昨年末の発売ですがすでに多くの人が読んでいるようで驚きました。未読の人にはとにかくおすすめのコミックです。

 

 さて、そんな「ダルちゃん」の作者はるな檸檬さんと「大家さんと僕」の矢部太郎さんの対談がCanCam.jpに掲載されています。これおもしろかったぁ。気になる発言がいろいろありました。少しだけ紹介。

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【書評】吉田修一「犯罪小説集」-映画化決定!人と人の間で起こる犯罪の「核心」に迫る物語

 5つの物語が収録された短編集だが、そのうちの2編「青田Y字路」と「万屋善次郎」が選ばれ、「楽園」というタイトルで今秋、映画になる。監督は「64-ロクヨン」などの瀬々敬久。選ばれた2つの物語にはつながりがない。それをどうつなげて1本の作品に仕上げるのか、映画もまた楽しみだ。

 

 さて、小説。吉田修一がさすがだと思うのはタイトル通りの犯罪小説5編なのだけど、各々のトーンが微妙に違うこと。その変化が楽しい。「青田Y字路」が北関東連続幼女誘拐殺人事件など下敷きになった犯罪があるのだが、実際の事件をベースにしながらも小説としての奥行きがあるのもさすがだ。描かれているのは犯罪の細部ではない。犯罪を犯したものとその周囲の人々との関係、そして、一人一人の心の襞だ。それをしっかりと描くことによって吉田修一は人と人との間で起こる犯罪のその「核心」へと迫っている。

 

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【映像化】中島京子原作、映画「長いお別れ」のキャスト発表。これは観たいぞ!

 さてこの映画、昨年11月に監督が傑作「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太と発表され、このブログでも紹介したのですが、先日やっとキャストが発表されました。

 

 原作の中島京子「長いお別れ」は僕も読みましたが、これなかなかいいですよ。アルツハイマー型認知症になった夫とその妻、そして、娘たちの10年間の話。とはいえ、けっして重くない、軽みのある小説で僕はとても好きです。書評を書いているので、ぜひ読んでみてください。

 

 

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【コミック/感想】はるな檸檬「ダルちゃん」-新井賞受賞!これは多くの女性たちに共感と勇気と希望を与えてくれる物語だ

 今年の新井賞受賞作。コミックだったので早速読んだ。あ、新井賞というのは三省堂神保町本店勤務の書店員新井見枝香さんが選ぶ本の賞。年2回芥川賞・直木賞と同じ日に発表されている。個人のものだけど、なぜか本好きには注目されてる賞です。

 

 で、はるな檸檬さんの「ダルちゃん」、これはいいぞ!久しぶりにコミックで興奮した。主人公の丸山成美は24歳の派遣社員。表紙ではカワイイ姿で登場しているが、実はこれは仮の姿。本当の彼女はダルダル星人のダル山ダル美、ダルちゃんなのだ。とまぁ彼女は自分で言っている。やたらとセリフが多い物語だが、なんだかとても切なく、読み進めていくうちにダルちゃんがとてもとても愛おしくなってくる。

 

 簡単に言ってしまうとこれは、幼い頃から周囲に合わせようと必死で生きてきた女性が本来の自分を失ってしまっていることに気づき、再生していく物語だ。フツーの女の子になろうと周囲を観察し、なんとかそれなりの「容姿」と「ふるまい」を手に入れたダルちゃんの健気さと悲しさ。彼女はそれを「擬態」と呼んでいる。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2019.2/3週)

 出た本。浅井健一・文 奈良美智・絵「ベイビーレボリューション」出てました。浅井さんはBLANKY JET CITYの人ですね。今はSHERBETSか。このあたり、疎くてすみません。アマゾンの紹介文、ちょっと引用してみます。

 

ある日突然、世界中のあかちゃんたちがはいはいし出した! ビルの谷間もジャングルも恐れず進むベイビーたちは、やがて戦場へ……。プロテストソング「Baby Revolution」の歌詞と、奈良美智さんの描き下ろしを含む作品で構成した絵本です。

あのベンジー・浅井健一があの奈良美智と絵本でロック!
SHERBETSの名曲をついに絵本!

 

 そうかそうか、これはSHERBETSの曲を元に作られた絵本なんだ。奈良美智ファンとしてはどんな感じかとても気になります。表紙のベイビー、いいなぁ。

 

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【書評】原田マハ「常設展示室」-巧いなぁ!原田マハの作家としての成熟を感じさせる短編集

  まず最初に軽く裏切られる。タイトルから常設展示されている絵にまつわる短編集かと思ったのだがそんなことはなかった。ま、それはある意味どうでもいいこと。「常設展示室」は原田マハの作家としての成熟を感じさせる一冊だ。

 

 最初の「群青」という作品こそニューヨークのメトロポリタン美術館で働く日本人スタッフが主人公だが、あとは日本が舞台。父親を介護する姉と弟の物語「デルフトの眺望」、高齢者専用住宅に住む母と娘を描いた「マドンナ」、パスポート窓口で働く女性とそこに現れたちょっと気取った男のストーリー「薔薇色の人生」、IT長者の愛人になった女性が見る夢「豪奢」。そしてラストは、時代の寵児となった現代美術の女性教授とその過去を描く「道」。それぞれ絵のタイトルが物語の表題になっている。

 

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【文学賞】第9回Twitter文学賞、投票が始まっています!締め切りは2月11日。ぜひ投票しましょう。

 始まってますよ、Twitter文学賞!昨年1年間に発売された国内の新作小説、海外の初訳小説(単行本からの文庫化や復刊は不可)の中から一番おもしろいと思った作品各1作をツイートする、というシンプルなスタイル。もう9回目になります。

 

 僕は1回目からずっと投票していますが、方針が決まっていて、年末に発表しているマイベストの最上位を投票しています。読む数が少ない海外作品の方はマイベストに入っていれば投票するけど、入ってなければ棄権。

 

 というわけで今回は、国内編が木皿泉「さざなみのよる 」、海外編はランクイン作品がなかったので棄権、ということになりました。

 

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