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【書評】バーナード・マラマッド「レンブラントの帽子」-人間というもののおかしさや哀しさを見事に浮き彫りに

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 1960年代から70年代なかばにかけて日本でも翻訳本が多く出されていたバーナード・マラマッド、彼の代表的短編集の中から3編を選び、吉祥寺の小さな出版社夏葉社によって復刊されたのがこの「レンブラントの帽子」だ。地元吉祥寺に出版社があるというだけで何となくうれしいのに、処女出版であるこの本、さらに続けて出された「昔日の客」が本好きを大いに喜ばせているという。これはもうパチパチパチと大拍手を送りたくなってしまう。「夏葉社」かぁ、名前もいいなぁ。

 

 さてその3編だが、表題作はニューヨークの美術学校に勤める美術史家と同僚である初老の彫刻家の話、「引出しの中の人間」はソ連に観光で訪れた傷心のライターと不遇なロシア人作家の話、「わが子に、殺される」はひきこもりのような息子とその父親の話だ。どの話も登場人物たちは対立、あるいはベクトルの違いがあり、良好な関係を作れていない。2人の関係はうまく修復できるのか?物語の結末に向かってのその「プロセス」こそがこの作家の真骨頂と言えそうだ。

 

 特に表題作には心を揺さぶられた。白い帽子をかぶっている彫刻家をめざとく見つけた美術史家が「それ、とてもいい帽子ですね」「レンブラントの帽子そっくりなんですよ」と声をかける。その会話の後から、なぜか彫刻家は彼を避けるようになり、何だかわからないまま彼の方でも彫刻家を嫌うようになってしまう。半年近くもそんな状況が続いた後、美術史家はふと思う。「なにがいったい、奴さんの癇(原文は病だれに利)にさわったというのだろう?」と。そこで彼が思い至ったこと、その後の行動、そして、忘れがたい結末へ、この流れがなんとも素晴らしい。ラストは本当にグッと来る。

 

 バーナード・マラマッドは、人と人との間の理解や誤解、寛容や不寛容、疑いや共感、そういう様々なものを描きながら、人間というもののおかしさや哀しさを見事に浮き彫りにする。まさに心に残る一冊!マラマッドという作家の存在を私たちに教えてくれただけでもこの短編集の価値はとてもとても大きい。訳者にあの小島信夫がいること、装丁が和田誠であることも付け加えておきたい。

 

2010.11.20 一昨日、佐藤多佳子さんから直接ツイートをもらいちょっとあせる。そのくせ、そっけない返事を書いてしまい、なんだかなぁ、なのだ。佐藤さぁ~ん「第二音楽室」昨日、買いましたよぉぉぉぉ。

 

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