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【書評】盛田隆二「夜の果てまで」-恋と自分の人生に真摯に向き合う男と女の物語

 冒頭でいきなり「失踪宣告申立書」なるものが登場する。不在者は涌井裕里子、申立者はその夫だ。1991年3月に失踪した妻との婚姻を解消するための書類で1998年に出されている。

 

 これからその失踪の話が始まるんだなと思ったら、第一章は90年3月の日付だ。そうか、これは失踪までの経緯を描く物語なのか、なるほど。まず登場するのが北大の学生で新聞社への就職をめざす安達俊介。そのバイト先で必ず「M&M」のチョコを万引きしていく女がいる。それが涌井裕里子だ。年齢が一回りも違う2人。ラーメン屋の主人と結婚している裕里子だが、いろいろとわけもありそう。この物語は春、夏、秋、冬の各章からなっている。ストーリーがポイントなので、ここでどこまで書くべきか迷うのだが、秋の章でこの2人は札幌を飛び出し、東京で暮らし始める。あれ?失踪の時期が違う…。どういうことだろう?もちろんその答えは、最後にちゃんと用意されている。

 

 「夜の果てまで」は恋と自分の人生に真摯に向き合う男と女の物語だ。度胸の据わった行動をとる裕里子はもちろんのこと、いろいろ考えてるようで行き当たりばったり感が強い俊介も自分なりに懸命に考え、最善の道を選ぼうとする。なによりその真摯さがいい。リアリズムの名手と呼ばれる作者によるリアルな作りが物語を支えている。途中で出て来る老夫婦とのエピソードが何ともおもしろい。ちょっと唐突な感じもするのだがスパイスとして良く効いているし、彼らは俊介へ大きな影響を及ぼす。そして、ラスト。そうかこういうふうに終わるのか。鮮やかな終わり方に拍手!拍手!

 

 佐藤正午の解説が秀逸だ。そういえば佐藤も失踪小説?を書いている。「ジャンプ」やこのブログでも紹介した「身の上話」。あ、失踪つながりで選ばれたのね。

 

 

2011.4.19 この本の作者盛田隆二さん。なんと僕と誕生日が一緒で1歳違い。しかも同じ大学の同じ学部を出てるらしい。あ~驚いた。

 

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