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【書評】金原ひとみ「マザーズ」-ただただ圧倒される3人の母親の物語

 零歳児一弥の母である主婦の涼子、2歳の女の子輪の母である作家のユカ。そして、3歳になる弥生の母、モデルの五月。「マザーズ」は同じ保育園に子供を預ける3人の母親の物語だ。この3人、涼子はマタニティーブルー、産後うつから虐待に走り我が子をヒドい目にあわせるし、ユカはドラッグに溺れ、五月は不倫している男の子供を宿す。彼女たちの愛や狂気、恐れや悲しみ、残酷さや身勝手さは本当に凄まじい。

 

 結婚はしてるが子供がいない僕などは、彼女たちの子供への接し方やその言動がリアルなのかさえもわからず、ただただ圧倒される。圧倒されたままで迎えた終盤に訪れるある悲劇。それまでに様々なことがあった母たちだが、3人はそこで一瞬立ち止まり初めて気がつく。何よりも「子供たちとの関係が自らを作っていた」ということを。少しだけ静けさが戻るここからラストまでがとてもいい。

 

 この小説、語りはすべて母親たちの一人称なのだが、どれも同じトーンで金原は3人を描き分けてはいない。実は3人は「母」というもののすべてで「マザーズ」は「マザー」なのだ。しかも、主人公たちは作者の側にペタッと張り付いている。母とはなにか?子とはなにか?男とはなにか?という作者自身の自問自答こそが「マザーズ」という物語なのだろう。母親たちの救いになる以上に、作家自身がこの物語を書くことで救われている、そんな気がする。

 

○「マザーズ」は2013年12月、新潮文庫で文庫化されました

2012.5.9 いやぁ、東京地方、天気悪いなぁ。読書は映画にもなったあの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」。

 

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