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【絵本】ショーン・タン「ロスト・シング」-居場所のない異形のものへの愛、彼には生きて行く場所があるの?

 「アライバル」が高い評価を受けたショーン・タンが2000年に発表した絵本作家としての本格デビュー作。その後の彼の作品でテーマとなっているものがシンプルに表現されている。デビュー作といっても、まったく気負いを感じさせないのが素晴らしい。

 

 ボトルの王冠を集めるのが趣味のちょっとオタクっぽい老け顔の少年が主人公。彼はビーチで「そいつ」と出会う。やけに大きくて、赤くて、奇妙な形をしたそれは、何をするでもなく居心地わるげにそこに座っていたのだ。なぜか気があった2人?はビーチで遊び、その後、少年はそいつを自宅へと連れ帰る。誰も迎えに来る様子もないし、もしかしらこの異形のモノは独りぼっちなのかもしれないから。とはいえ、両親と共に住むその家では彼の居場所もなく…。ふと目に留まった新聞広告を見て、翌朝、「そいつ」をある場所に連れて行くのだが…。

 

 ショーン・タンが「アライバル」等で描いてきたのは、存在の不安定さ、どこにも属さないことへの不安なのだが、この作品の「そいつ」もまたそういう存在である。表情などはまったくない。しかし、読み進めていくうちに彼が愛おしくなり、その孤独が心にグッと迫ってくる。シンプルながら強い表現はさすがショーン・タンだ。彼らしいこまやかな描写と細部へのこだわりが楽しい。エドワード・ホッパーの絵をパロディにしたコマがあると訳者のあとがきにある。その訳者、岸本佐知子さんの文章も平易な言葉を使いながらスッと心に届くとても素晴らしい出来である。

 

◎ショーン・タンのその他の本の書評はこちら

 

2012.10.10 やっと秋らしくなってきましたね。っていうかけっこう寒い。そういえば最近、日本人がいろんな分野で活躍をみせていてなんだかうれしいですね。あ、ノーベル文学賞は今夜8時発表だ。読書は水村美苗「母の遺産 新聞小説」。あ、間違えた、明日の夜8時だ。

 

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