また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評・感想、出た本出る本など、本関連の最新ニュースを届けます。

【書評】小池真理子「沈黙のひと」-生きること、老いることを描いて、これは本当に見事な小説!

 今年の吉川英治文学賞受賞作だ。作者自身が「生涯の勝負作」と語っただけのことはある力の入った小説。内容的にも今までの小池作品とはまったく違う。いや、根底に流れているものは一緒かもしれないが。

 

 「沈黙のひと」とは主人公玲子の父親泰造のことだ。父とはいっても彼は母を捨て別の女に走り、2人は玲子が幼い頃に離婚している。物語はその父の死から始まる。老人ホームで死んだ泰造だが、この父娘、差し向かいで接するようになったのは泰造がホームに入ってからだった。それまで玲子は、父に対して憎しみもないが、深い情愛も持ってはいなかったのだ。

 

 短歌を作り、本をよく読んだ文学好きでダンディな父、仙台赴任中に不倫関係の女性がいた父、パーキンソン病になってほとんど話すことができなくなった父、そんな父親の遺品からは、ポルノビデオや性具が見つかった。遺品整理、49日の法要での異母姉妹可奈子や千佳との交流も交えながら作者は「沈黙のひと」の人生を描いていく。印象的なのは幼い頃の家族3人の暮らしであり、ホーム入居後の父娘のふれあいだ。

 

 小池真理子は登場人物をていねいに描くことで、その「人間」をくっきりと浮き彫りにしていく。泰造はもちろんだが、玲子や母の久子もしっかりと描かれている。そして作者は、どんな人間もどんな生き方も許容しているように思える。「生きること」「老いるということ」「家族というもの」を描いて、これは見事な小説である。

 

◎「沈黙のひと」は2015年5月、文春文庫で文庫化されました。

2013.7.3 「あまちゃん」をヘラヘラ見ているうちに1年の半分が終わってしまった。読書は原田マハ、窪美澄他の「恋の聖地」。

 

【書評ランキングに参加中】

ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ