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【書評】絲山秋子「忘れられたワルツ」-日常を描きながらも怪しさや不安定さを強く感じる物語

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 7つの物語が収録された絲山秋子の最新短編集。震災後を舞台に被災地とは少し離れた街や村を舞台にした話だ。この震災があの震災なのか何なのかはよくわからない。ただ「それ」は確かにあった。そして、人々は「その後」を生きている。

 

 自衛隊しかない町の工務店に勤める女性事務員の恋愛論、強震モニタを見続ける友との再会の夜、先生の葬儀に向かう雪のハイウェイで出会ったオーロラを運ぶ女、空に向かって音符を投げる預言者との不思議な出会い、得意先に向かう電車が見知らぬ駅に着き戸惑う上司と部下、母の間男を捕まえに行くピアノ好きの姉、女装を趣味とする老人が体験した神との不思議な遭遇。いつもの絲山の文章のようであるが、何だか少し違う。

 

 帯に伊坂幸太郎が「『何気なく見えるのに、奥深い』小説をどうやったら書けるのか、僕には分からない」という一文を寄せている。人々の心を揺るがす大きな出来事があった後、戻りたいはずの場所は近いようでとても遠い。そこに帰り着くことはできそうでできない。日常を描きながらも怪しさや不安定さを強く感じるこれらの物語、そこにある「気分」に激しく共感している自分がいる。やはり、絲山秋子はすごい作家である。

 

◯この本は2018年1月、河出文庫で文庫化されました。

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◯絲山秋子のその他の本のレビューははこちらから

  

2013.8.19 夏バテで胃が弱り、ついに病院に行った。薬を飲んでいるが全快までにはほど遠い感じ。早く涼しくなって欲しいが…。読書は朝井リョウ「世界地図の下書き」が終わり、宮部みゆき「泣き童子」。

 

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