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【ノンフィクション/書評】仁科邦男「犬の伊勢参り」-人間の代わりに犬が参拝、江戸時代にはそんなことがあったのだ

 著者である仁科邦男氏は、名もない犬たちが日本人の生活とどのように関わり、その生態がどう変化してきたか、という研究を続けている人だそうだ。話題になったこの本もそのプロセスの中で生まれたものに違いない。

 

 さて、この「犬の伊勢参り」だが、犬たちがある日突然思いついて、「そうだ、お伊勢さん、行こう」って伊勢参りに出かけたわけではないようだ。ま、当たり前か。江戸時代、実は、人間にはそういうことがあった。伊勢参り願望の強さから、しばしば仕事も何もかも放り出し、親や主人にも黙って、仲間と伊勢へ向かった。いわゆる「抜け参り」ってヤツだ。その大規模なものが「御蔭(おかげ)参り」だ。

 

 では、犬は?犬が伊勢に向かうケースとして一番多かったのは「代参」である。つまり、人間の代わりに犬に参拝してもらう。でも、それってうまくいくの?詳しくは本書を読んで欲しいのだけど、この本で語られているのは、犬の参拝をしっかりとフォローし伊勢まで届け、さらに、申し送りを繰り返して、故郷まで送り届けた江戸時代の人々のことだ。代参の犬ではなくても、霊力があるといわれる白い犬がその辺りを歩いていて、それがお伊勢様の方向だったりすると、彼らは「あれって、伊勢参宮の犬じゃない?」と勝手に思って、代参犬に仕立て上げちゃった例もあったらしい。

 

 つまりこの本は、犬の物語であると共に、江戸を生きる人々の物語でもあるのだ。構成など今ひとつのところがあってちょっと残念だが、それなりにおもしろく読めた一冊だ。

         

2013.8.26 少し涼しくなってきた。そのまま、そのまま。読書は宮部みゆきの「泣き童子」。やっぱりこの人はうまいなぁ。

 

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