木皿泉待望の新作。ドラマもいいけれど小説もいい。「カゲロボ」は、「はだ」「あし」「めぇ」「こえ」「ゆび」「かお」「あせ」「かげ」「きず」、どれも身体に関連しているタイトルがついた9つの物語。それぞれの登場人物は時々繋がったりもしている。冒頭の「はだ」にメインタイトルになっているカゲロボが登場する。それは、ネットで検索をかけても絶対に出てこないヒミツの監視ロボット。常に虐待やいじめがないかを見張っているらしい。他の話にもカゲロボという名前ではないが、同じ役割を持ったロボットたちが登場する。
各々の話の登場人物である人間たちは、自分の目の前にある「現実」になじむことができない。そのために、彼らはいろいろと傷つきながら生きている。最終章の「きず」まで読み進めていくと、カゲロボはそんな人間たちを監視し罰するためではなく、そばに寄り添い、見守っているために存在していることが分かってくる。カゲロボたちがいることで、彼や彼女は生きている実感や人間らしさを取り戻し、救われているのだ。
誰かが見ていてくれること、そして「大丈夫だよ」と言ってくれること。誰もが傷つきやすいこの世界で、それはとても大事なことなのだ。この物語はそのことを僕らにしっかりと教えてくれる。
DATA◆木皿泉「カゲロボ」(新潮社)1400円(税別)
◯勝手に帯コピー〈僕が考えた帯のコピーです〉
ずっとあなただけを見てきた、
カゲロボは静かに言った。
2019.6.15 Ontenna展、行ってきた。シンプルでとてもいい空間。20日までです。ぜひぜひぜひ!読書は窪美澄「トリニティ」が終わりそう。
【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。