この表紙、赤いコートを着てちょっと口を開いた女の子。その口元に、フっと飛び出したような小さな「の」の字。これが絵本のタイトルだ。「の」?なに?なに?なに?答えは見開きを3つ4つ見ていけばすぐに分かる。この絵本は「の」でつながっていく物語。例えば最初のフレーズは
わたしの
右ページに「わたしの」というフレーズがあり、左ページに表紙の女の子の帽子を脱いだ横顔の絵、次のページからは
お気に入りのコートの/ポケットの中のお城の/いちばん上のながめのよい部屋の/王さまのキングサイズのベッドの
と続いていく。全部で39の見開きがこのように「の」でつながっていくのだ。なるほど、なるほど。今まで誰かが考えていても不思議ではないけれど、これ多分、初めてなんだろうな。おもしろい。
「の」という助詞は他の「が」や「も」や「を」よりも接着効果が高い。しかも、文章をテンポよくつないでいく力がある。この絵本、最初に読む時は誰もが、ページを次々とめくっていくのではないか。そうせずにはいられないのだ。息を止めて、最後まで読んでハァ〜と息を吐く、そんな感じ。2度目に読む時は反対に、junaidaさんの絵を楽しみながらゆっくりと読む。接着効果といえば、彼の絵にもそれがあるのだ。細部までじっくりと見ながら、つながる要素を探していく楽しさ。これは言葉と絵でつながっていく物語。はてさて、どんな結末が?ぜひ、本屋で手に取ってみて欲しい。
DATA◆junaida「の」(福音館書店)2,000円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
ののその先の楽しさの美しさの
向こうの幸せの先にあるの。
2020.1.31 ううむ、新型肺炎がやばすぎる。こうなったらもうどこに潜んでいるのか分からないよね。読書は絲山秋子「小松とうさちゃん」。いいぞ!
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