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【書評】小野不由美「白銀の墟 玄の月」-王・驍宗は見つかるのか?十二国記、圧巻の全4巻!

小野不由美「白銀の墟 玄の月」第1巻

 

 さてさてさて、小野不由美の「十二国記」の新作、18年ぶりの書きろし、ってすごくない?文庫だけれど全4巻の大長編だ。タイトルは読めない人も多いと思うが「白銀の墟 玄の月(しろがねのおか くろのつき)」。ようやく全4巻を読み終えた。

 

 「十二国記」はこの世界ではない異世界の十二国を舞台にしたファンタジーノベルだ。国は十二あるがすべての国が舞台になるのではなく、今回は戴国(たいこく)が舞台。既刊8冊のうち、戴国がらみは「魔性の子」「風の海 迷宮の岸」「黄昏の岸 暁の天」の3冊。これらの物語の中心にいるのは戴国の麒麟・泰麒だ。麒麟というのは天の意思を受けて王を選ぶ国にとっては唯一無二の存在。人と獣の2つの姿を持っている。その泰麒は蓬莱(日本)→戴国→蓬莱→戴国と数奇な運命を生きている。1度目の戴国で王を選んだ泰麒だが、半年後、王は消え、自らも蓬莱へと去る。将軍李斎が他国に働きかけ泰麒を探し出し、6年の後また戴国に戻るのだが…。

 

  ここから後が「白銀の墟 玄の月」の物語になる。国に戻った泰麒と李斎たちが行方の知れない王、驍宗(ぎょうそう)を探す話だ。4巻あるが長さはまったく感じない。ただ、全体を覆う戴国の荒廃が辛い。無策の偽王・阿選が立ち、民は貧窮を極め、厳冬を前に希望のかけらも無い。王を探す泰麒は麒麟としての能力を失っており、李斎はお尋ね者の身だ。ただ、この国にも本物の王・驍宗の帰還を密かに願うものたちがいる。彼らの助けを借りながら王の行方を探す泰麒たち。その途上で泰麒はある決断を下す。自ら王宮に乗り込み偽王・阿選に会うのだ。王の死を伝える白雉は未だ落ちていない。どこかで生きているはずの驍宗は見つかるのか?戴に希望は蘇るのか?3巻終盤から4巻ラストまでの怒涛の展開がすごい。

 

 泰麒たちがわずかな希望を拠り所に王を探すように、読者である僕らもまた、物語の彼方に見えるわずかな光を頼りに、先へ先へと読み進めて行く。小野不由美という作家の展開力、構成の巧みさ。ここまで書くかと思われるような細部へのこだわりが物語を支えている。この物語の中心にあるのは民を何とか救いたいと思っている施政者やその周囲の者たちの思いであり、本当の王が見つかり希望の火が灯ることを切望する民一人一人の思いだ。そして、最後に行き着くのは…。十二国記、圧巻の全4巻!

DATA◆小野不由美「白銀の墟 玄の月」(新潮文庫)全4巻 670~750円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

偽王、悪政、貧困、絶望…。

この国に、本当の王はいない。

麒麟たちは探す、真の王を。それだけが希望!

 

 

2020.2.7 クルーズ船が何だか大変なことに。騒ぎすぎ、という話もあるけれど。読書は宮部みゆき「黒武御神火御殿」

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