また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【書評】上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」-医療とは?命とは?生とは何か?を問う「鹿の王」のその先の物語!

鹿の王 水底の橋

上橋 菜穂子 KADOKAWA 2020年06月12日
売り上げランキング :
by ヨメレバ


 本屋大賞と医療小説大賞を受賞した「鹿の王」のその先の物語。こちらもまたまたおもしろい。文庫になってから読んだのだがこれは単行本で読んでおくべきだった。上橋菜穂子の小説は彼女が文化人類学者ということもあるのだろうけれど、いつも志の高さを感じる。

 

 前作「鹿の王」は黒狼熱という感染症の流行が大きなテーマになっていたのだが、これはその危機が去った後の話。主人公は感染症の謎を解き明かしたオタワルの医師ホッサルだ。舞台は大帝国・東乎瑠(ツオル)のアカファ領。ホッサルが学んだオタワルの医術は西洋医学的なもの。対して東乎瑠の祭司医たちが信仰する清心教に基づく医術は東洋医学的なもので、この対立が「鹿の王」同様、物語の大きな背景になっている。祭司医たちの一部はオタワル医術の価値や成果を認めながらもそれを完全に受け入れることはできない。

 

  ホッサルが祭司医である真那に誘われ恋人ミラルと清心教医術発祥の地、安房那領を訪れることで物語が大きく動き出す。真那の父、清心教祭司医の上師で安房那領主でもある羽羅那は難病で苦しむ孫娘のため対立しているオタワルの医師ホッサルに意見を求めたのだ。安房那領に滞在中、清心教医術の真の歴史を知ることでホッサルにも大きな心の変化が生まれる。自分が信じてきたこと、それがすべてなのか?命の意味とは?ミラルもまた新たな道を模索している。

 

 ちょうどその頃、大帝国・東乎瑠では次期皇帝候補2人の争いが始まっていた。それはオタワル医術の運命を左右する争いでもあった。そんな折も折、安房那で行われた行事で起こる皇帝候補の暗殺未遂事件。その詮議の場と物語はクライマックスへと進んでいく。詮議の場の迫力!最終章もまたいい。これは医療とは何か?命とは、生とは何かを問う物語。

 

 作者の文庫あとがき、そして東えりかさんによる文庫解説では「鹿の王」がらみでコロナのことが語られている。これもまたぜひ読んで欲しい。
DATA◆上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」(角川文庫)800円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

私は何を信じて人を診ればいいのだろう?

「鹿の王」のその先に

こんな物語があった。

  

◯上橋菜穂子、「鹿の王」の僕の書評です

 

 2020.8.12  暑いじゃないか、暑いじゃないか、暑いじゃないか。読書は燃え殻「すべて忘れてしまうから」。

 

【書評ランキングに参加中】

ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ