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【書評】凪良ゆう「流浪の月」-本年度本屋大賞受賞作!誘拐事件の被害者と加害者が再び出会った!

 

 今年の本屋大賞受賞作。全体は6つの章に分かれている。1章が「少女のはなし」、2章以下は「彼女のはなし」と「彼のはなし」が数章ずつ。謎めく1章、次に来る「彼女のはなし1」がプロローグ的な内容になる。話の分かる両親と幸せな暮らしを送っていた主人公の更紗。しかし、父母がいなくなり彼女の日々は暗転、厳格な叔母の家での悲しい日々が待っていた。しかも、この家では…。

 

 これは誘拐事件で被害者と加害者になった少女と大学生の物語だ。ここで細かいことを書いてしまうと未読の人の楽しみを奪うことになるので言えないが、この事件の真相は、いわゆる「世間」が考えてるものとはまったく違うものだった。ニュースを知った人はロリコン大学生に誘拐された可愛そうな少女と誰もが思った。しかし…。

 そんな2人が15年の後に再会する。更紗はいつまでも「更紗ちゃん誘拐事件」の被害者として知れ渡った名前が日常の邪魔をしている。一方、加害者の文(ふみ)は、苗字を変え、街の片隅でひっそりと小さな店を営んでいる。しかし、ネット社会は刑期を終えた文にも容赦はしない。2人の再会は更紗の恋人など互いの周りの人間にも大きな波紋を投じる。

 

 事件の真相、その裏に潜むもの、2人は世間の偏見と抗いながら新しい関係を築いていく。その「関係」こそがこの物語の読みどころだと思う。ただ残念なのはこの関係にもう一歩心理的なリアリティがない。ストーリー的には確かにおもしろいのだけど、本屋大賞受賞作としてはちょっと物足りない感じがするのも事実だ。
DATA◆凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社)1500円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

誰もがそれを望んでいない。

しかし、2人にはどうしても

必要な再会だった。

 

◯この本は2022年2月、創元文芸文庫で文庫化されました。

 

2020.10.7   大統領、退院したけれどなんだか怪しい。ヨーロッパの再拡大も気になるなぁ。読書は北村薫「雪月花」。

 

 

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