俵万智の最新歌集。2013-2020、足掛け8年分418首を収めた第六歌集だ。この間に彼女はまる5年暮らした石垣島から息子の中学進学を機に宮崎へと居を移している。全体は3部構成。1部は「2020年」、2部は「2013年〜2016年」、3部が「2016年〜2019年」。コロナ禍の今、石垣島時代、宮崎時代となっている。タイトルがいいなぁ、と思っていたらこれは宮崎時代の歌から
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
1部冒頭の2首が心を打つ。
朝ごとの検温をして二週間前の自分を確かめている
トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ
そしてこんな歌もまた
外出というにあらねど化粧してメガネをはずすパソコンの前
感染者二桁に減り良いほうのニュースにカウントされる人たち
あぁ、やっぱり俵万智はすごいわ。もう少し好きな歌を紹介しましょう。
にわか雨よりも激しき音たてて空芯菜を炒めておりぬ
六階の窓に海藻を貼りつけて気がすんだかい台風コーニー
同点のシュート決まれば7時間前の人らと共に喜ぶ
日向夏くるくるむいてとぎれなく長くまあるく一人を想う
みちのくの母の命のよみがえりスミレの花のような毒舌
あとがきで彼女は「短歌は、日記よりも手紙に似ている」と書いている。そうだな、確かにここには心にしっかり届く歌たちがある。では、最後にもう一つ。
すれ違うことに不慣れな生き物となりてスマホという命綱
DATA◆俵万智「未来のサイズ」(KADOKAWA)1400円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
2020コロナ・イヤー。
手紙のように誰かに届けたい歌がある。
◯俵万智が一青窈に短歌を教えるこの本、おもしろいぞ!
2020.12.16 支持率がドカーンと落ちたのでGoToを一時中止にした首相。しかも2週間後。国民のことを考えてるわけではない。読書はブレイディみかこ「ブロークン・ブリテンに聞け」。