「本の雑誌」の2020上半期ベストと2020文庫ベストテンで共に1位に輝いた注目作。〈Side 百花〉と〈Side 宝良〉の2冊だがまずはPart1にあたる〈百花編〉を読んだ。分類するとライトノベルに入るのかもしれないが、まぁそんなことはどうでもいい。おもしろければなんでも読むぞ。
「パラ・スター」というタイトル。簡単に言ってしまえばパラアスリートのスターということだろう。第1章で主人公となる2人、百花(ももか)と宝良(たから)の現在が語られる。車イスメーカーで働く百花と車イステニスの新進選手宝良、作者の阿部暁子は親友である2人のつながりから百花の仕事場である藤沢製作所の変遷、彼女の指導係である上司・小田切との関係、車イスの制作過程、そして、思い通りに行かず悩む百花自身の逡巡までをこまやかに描いている。
「ターちゃんはパラリンピックにも出るくらいの、最強の車いすテニス選手になって。わたしは、たーちゃんのために最高の車いすを作るから」
回想的に描かれる第2章がいい。泣き虫で感激屋の百花とクールで物怖じしない宝良。対照的な性格の2人の中学校での出会いが語られ、さらに、テニスで全国レベルの選手だった宝良の高2の時の事故とその後の車いす生活、宝良を励まし車いすテニスへと導いていく百花の様子がその友情の変遷が淀みなく描かれる。
続く3章と4章、小学生で中途障害者になった佐山みちるとの出会いを通して仕事の厳しさを知る百花、それをバックアップする宝良。とにかくこの物語では2人の関係が素晴らしい。いろいろな場面で強く心を揺さぶられ、思わず泣きそうになった。2人の揺れ動く心をこまやかに描く阿部暁子の表現力もすごい。すでに読み始めた〈Side 宝良〉もかなり感動的だ。ぜひ!!!
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
彼女のために最高の車いすを作る。それがわたしの夢!
たーちゃんはいつだって
わたしのヒーローで誇りなの。
2021.2.17 世界の感染者5週間で半減という朗報。ワクチン接種も始まったけれどこのまま減っていくのかな?読書は阿部暁子「パラ・スター〈Side宝良〉」。