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【書評】山本文緒「ばにらさま」ー山本文緒さん最後の短編集は女性を主役にした6つの物語。彼女の小説、まだまだ読みたかった

 

 亡くなった山本文緒さん最後の1冊は短編集。とは言っても表題作の雑誌掲載は2008年、一番新しいのが「20×20」の2015年なので最新のものとはいえない。これからまだ未発表作品が本になるのだろうか。なるのならすごくうれしいのだけど。

 

 

 

 追悼の文章(というほどのものではないが)で書いたが僕は山本文緒さんのいい読者ではない。それでも病から復帰してからの「なぎさ」「自転しながら公転する」はどちらも大好きな物語だった。山本文緒らしさ、というのはよくわからないのだがこの短編集には僕が読んだ彼女の小説のエッセンスを強く感じた。切ないけれどどこか苦いテイスト、そしてラストの見事さ。「ばにらさま」では全6話でそれが味わえる。

 

 どれも好きなのだが僕が時に好きなのは最後に収められた「子供おばさん」。47歳で死んだ友人が主人公に遺したもの、それはなんと一匹の犬。同じ独身同士で仲は良かったが7年も会っていなかったし、犬を飼っていることも知らなかった。彼女の気持ちがよく分からない。それでも主人公は犬を貰うことにした。すると…。この後は読んで欲しいのだけど幼稚で身勝手な子供おばさんみたいな主人公が犬との日々を通して少しだけ何かを感じている、そのちょっとあやふやな感じがとてもいい。「菓子苑」「わたしは大丈夫」など仕掛けの強い物語もそれだけではない山本文緒らしさがある。う〜ん、まだまだ読みたかったな、彼女の短編も長編も。

◆DATA  山本文緒「ばにらさま」(文藝春秋)1400円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

2021.10.27  眞子さん結婚。これから三流マスコミに追い回されたりしないことを願うばかり。読書は窪美澄「たおやかに輪をえがいて」。