「ひとり選考委員」によって選ばれるBunkamuraドゥマゴ文学賞、32回目の今年はロバート・キャンベルさんが選考委員。受賞作は木村紅美さんの小説「あなたに安全な人」に決まりました。パチパチパチ!!タイトルは何度か耳にしていた木村さんの小説。どんな内容なのかまずはアマゾンの紹介文を!!
人を死なせた女と男の、孤独で安全な逃亡生活――。3.11直前の少年の死をめぐる海難事故と、沖縄新基地建設反対デモ警備中の出来事が、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で交差する。
尾崎世界観推薦!
「ここ最近、分断を許さないことで起きる分断のせいで、
空気を読むのにずっとうんざりしていたから、
ひたすら気配を読むこの読書が幸福だった。」
「互いの気配は、ときどき、幽霊がいるのかな、とでもびくっとさせるくらいに漂わせるのが理想です」(本文より)
3.11直前に教え子をいじめ自殺に追いやってしまったかもしれない元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中にデモ参加者を不慮の事故で死なせてしまったかもしれない便利屋の忍。
過去の出来事に苛まれるふたりは、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で出会った。
人が人を傷つけ、傷つけられる世界で、「東京からの移住者」が遂げた謎の死をめぐり、ふたりの運命は動き出す――。
尾崎世界観さんが言う「ひらすら気配を読む」というのがなんだかいいですね。ちょっと読んでみたいぞ。
江國さんの講評全文は下のドゥマゴ文学賞のHPで読めますが、個人的にはこの一文が特に印象に残りました。
世界を覆う不均衡に声と形を与えようとしている点において、ひとまず高い評価に値する作品であることは間違いない。日々、自分の体に刻まれる無数の小さな引っ掻き傷を、あたかもページをめくりながら指先で確かめるごとき違和と、納得感を得た。読後感は、けっして爽やかなものではない。