ドゥマゴ文学賞は1人の選考委員によって選ばれるのが大きな特徴ですが、今回は評論家でエッセイストでもある川本三郎さんが選んだ松浦寿輝さんの「名誉と恍惚」に決まりました。この小説は谷崎潤一郎賞も受賞しています。ダブル受賞、すごいなぁ。
アマゾンの紹介文をここに引用してみましょう。
日中戦争のさなか、上海の工部局に勤める日本人警官・芹沢は、陸軍参謀本部の嘉山と青幇の頭目・蕭炎彬との面会を仲介したことから、警察を追われることとなり、苦難に満ちた潜伏生活を余儀なくされる…。祖国に捨てられ、自らの名前を捨てた男に生き延びる術は残されているのか。
魔都と呼ばれた1930年代の上海が舞台。あの「上海バイスキング」もこの時代ですよね。川本さんの評の中では、こんな言葉に心を惹かれました。
この小説の第一の魅力は、混沌とした上海の裏面が逃亡者の目でとらえられていることだろう。華やかなジャズクラブが並ぶ大通りから、いつ殺人が起きてもおかしくないような危険な裏通りまで。権力に追われる主人公は苦力や阿片中毒者が生きる地下の最底辺にまで入り込む。暴力、麻薬、戦争、エロティシズム、デカダンス。
主人公、芹沢一郎の逃亡生活は悪の世界への旅になってゆく。一種の冥府めぐりである。すぐれた文学が人間の悪を描くとすれば、この小説は確かに危険な悪の華の香りを持っている。
1300枚にも及ぶ長編小説。ううむ、ちょっと読みたくなってきたぞ。
○ドゥマゴ文学賞発表ページはこちら。川本さんの講評もぜひ。
受賞作品 | Bunkamuraドゥマゴ文学賞 | Bunkamura
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