このタイトル、好きだなぁ。坂本さんと高橋幸宏さんは僕より1つだけ上なので二人が亡くなったのは本当にショックだった。「音楽は自由にする」は雑誌「エンジン」2007年1月号〜2009年3月号に連載された坂本さんへの27回に及ぶインタビューをまとめたものだ。インタビュアーは同誌の鈴木正文編集長。年代的には坂本さんが生まれた1952年から2001年までのことが書かれている。文庫で読んだが単行本の発売は2009年だ。インタビュー全体を読んで感じるのは坂本龍一さんという人間の人間性。おごりも高ぶりもなく、とてもフラットで冷静な人間であることがとてもよく分かる。
音楽の話はもちろんおもしろい。ただ、YMO前夜から結成、散開あたりの話はこの本の核になる部分だと思うのだが意外とアッサリしている。それよりも「戦場のメリークリスマス」と「ラストエンペラー」、彼が役者として、さらに作曲家としても関わったこの2本の映画の話がすこぶるおもしろい。特に後者!監督のべルトルッチとの出会いから音楽担当すまでの経緯、再依頼、試写会での衝撃など知らないエピソード満載だ。
終盤でまさに現地ニューヨークで経験した9.11のことが語られるが、彼の恐怖感というのが非常によく分かるし、そういう非常時では音楽なんてできなくなってしまう、「やがて又歌が聴こえて来たのは諦めからです」という言葉にも納得してしまう。坂本龍一の音楽はここからまた一回り大きなものに変わっていくのだ。
それにしても僕はもう少し坂本さんの音楽を知ってると思っていたんだけどなぁ。そんなことなかったなぁ。知らないCDもたくさんあった。続編である「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」も読まなくては。
◆DATA 坂本龍一 「音楽は自由にする」(新潮文庫)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)