僕の頭の中には沢木耕太郎と天童荒太と野島伸司が「同類」としてある。彼らに共通するのが、まず結論ありきで、そのためならどんな表現もいとわない、というところだ。だからなんだか物語が「作り物」めいてくる。その、作り物めいちゃうけどやっちゃうのよね的な感じがダメなのだ。沢木耕太郎は最初の頃はそんなことはなかったんだけどなぁ。ある時期からこの傾向が強くなった気がしてどうにもイヤになっちゃったのだ。
さて、今度、文庫になったこの「旅する力」だが、単行本が出た時に読んで素直におもしろかった。副題に「深夜特急ノート」とあるようにこれはあの名作「深夜特急」の最終便として書かれたエッセイだ。そこにはデリーからロンドンまでバスで行くというあの旅に至るまでの話、旅の最中の話、その後日談、そして、彼の今現在が綴られている。沢木氏の旅の哲学や「深夜特急」では書かれなかった裏話的なものも紹介されていてうれしい。肩肘張らないリラックスした語りなので、こちらも素直に楽しむことができた。
旅の適齢期について語った文章が心に残る。彼は言う「かつて、私は、旅をすることは何かを得ると同時に何かを失うことでもあると言ったことがある。しかし、齢をとってからの旅は、大事なものを失わないかわりに決定的なものを得ることもないように思えるのだ」と。う~む。今の自分に旅する力はあるのだろうか?
「深夜特急」を読んだ人はぜひぜひ。読んでない人は本編(文庫で全6冊)を読んでからぜひ。
2011.4.29 そうか、ゴールデンウィークか。フリーランスというのはあまり大型連休は関係がない。毎日が休みのようであるし、毎日が仕事のようでもある。そういう日常から逃げ出すには旅に出るといいのだけど、「旅する力」なさそうだしなぁ…。
【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。