また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【書評】木皿泉「カゲロボ」-監視ロボット、カゲロボ!きみのそばにもいるかもしれない

 木皿泉待望の新作。ドラマもいいけれど小説もいい。「カゲロボ」は、「はだ」「あし」「めぇ」「こえ」「ゆび」「かお」「あせ」「かげ」「きず」、どれも身体に関連しているタイトルがついた9つの物語。それぞれの登場人物は時々繋がったりもしている。冒頭の「はだ」にメインタイトルになっているカゲロボが登場する。それは、ネットで検索をかけても絶対に出てこないヒミツの監視ロボット。常に虐待やいじめがないかを見張っているらしい。他の話にもカゲロボという名前ではないが、同じ役割を持ったロボットたちが登場する。

 

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【広告関連】Ontenna、ついに発売へ!「Ontenna展-感じること、それが未来。」も始まります。コピー書きました

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 え〜っと、あまり自分の仕事のことはブログでは書かないのですが、ずっと関わってきた Ontenna(オンテナ)がやっと発売等決まって、今日からイベントも開催されるのでちょっと興奮気味にMacに向かっています。

 

 Ontenna は耳の悪い人たちのために開発された、音をからだで感じるユーザインタフェースです。写真の女の子のように髪の毛に付けたり、男の子のようにえり元やそで口などに付けることで、振動と光によって音の特徴をからだで感じることができます。特に、あまり聞こえない子供たちにとって、音を「感じること」ができるのは大きな喜びであるはずです。

 

 同時に Ontenna は、健聴者とろう者が共に楽しむことができるインタフェースでもあります。スポーツや音楽などで周りの人と感動を共有できることもまた、彼らにとってはすごくうれしいことなのです。そこには確かに「つながる喜び」があります。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2019.6/3週)

 出る本。文庫化です。宮部みゆき「三鬼 三島屋変調百物語四之続」(6/14)出ます。シリーズの第四弾、これはもう安定のおもしろさ。表題作の「三鬼」、印象に残ってるなぁ。まぁ4巻目からでも読めますが、未読の人は1巻目「おそろし」からぜひ!あと、これ単行本は日本経済新聞出版社で文庫はずっと角川から出てるのですが、文庫の表紙がどれもツマラナイ。なんとかしろよ、角川!

 

◯「三鬼 三島屋変調百物語四之続」の書評はこちら


 書評家の瀧井朝世さんが選んだ恋愛小説傑作アンソロジー「運命の恋」(6/14)、文庫で出ます。選ばれたのは村上春樹、角田光代、山白朝子、中島京子、池上永一、唯川恵の6人の短編。山白朝子って乙一の別名ですね。で、何が選ばれてるのか、タイトルはちょっと分かりません。これは気になるところ。

 

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【絵本/感想】トーベン・クールマン「エジソン ネズミの海底大冒険」-今度は海底への旅!子供たちが大好きな冒険物語

 トーベン・クールマンのネズミの冒険シリーズの最新作!「リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険」「アームストロング 宙飛ぶネズミの大冒険」に続く第3弾だ。この表紙でも分かると思うがクールマンはとにかく絵が素晴らしい。オリジナルなスタイルだし、細部までしっかり描かれていていろいろと発見もあるので、見ているだけで楽しくなって来るのだ。

 

 最初の見開き、本屋の店の中を描いた1枚からクールマン・ワールドに引き込まれていく。本棚に隙間なく並べられた本、店主と話をする本を持った少年、窓の外には車の列。そして、店のそこここに隠れているネズミたち。実はこの本屋のネズミ穴の奥に彼らの大学があるのだ。主人公の若いネズミ、ピートと教授はそこで出会い、海底に沈んだと言われているピートの先祖のお宝探しに出かけることになる。

 

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【絵本/展覧会】いやいやいや、これは必見!ちひろ美術館・東京の「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」、見に行きました

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 自転車で上井草駅の近くのちひろ美術館・東京へ。自宅から20分ぐらい。大好きな絵本作家ショーン・タンの展覧会が開かれているのだ。こういうイベントを企画してくれた美術館に本当に感謝!彼の作風やその世界はいわさきちひろさんも絶対に気に入ったはずだ。

 

 ショーン・タンの絵本はこのブログでもほとんどの作品を紹介しているが、まさにオリジナルな世界だ。その世界に接しているうちに読んでいる人間もまた知らない場所に連れていかれる。「どこでもないどこかへ」という副題のように。

 

 この展覧会、何といっても原画が見られるのがうれしい。初めて絵と文を書いた「ロスト・シング」から、世界中で絶賛を浴びた文字のない絵本「アライバル」、最新作で日本未発売の「内なる町からきた話」まで、多くの作品の原画が展示されている。最新作の原画は油彩でしかも100×150cmという大きさ!もうこれはアートです。さらに、デッサンやアイデアスケッチ、コンテなど出来上がるまでのプロセスもたくさん見ることができる。ショーン・タン、巧いなぁ。巧いだけではなく、表現へのこだわりがすごい。やはりこの人も天才なんかじゃない。まさに努力の人!

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2019.6/2週)

 出る本。「原田マハの印象派物語」(6/6)出ます。これは新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊。「芸術新潮」昨年6月号に書き下ろした7つの物語をまとめたものです。登場するのは印象派の9人の作家。雑誌の目次からその内容を引用してみますね。

 

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【絵本/感想】シャーロット・ゾロトウ作 酒井駒子絵・訳 「ねえさんといもうと 」-姉妹の関係の変化を鮮やかに描いた傑作

 ううむ、これはいいなぁ。素晴らしい!シャーロット・ゾロトウ作のこの絵本は1974年に福音館からマーサ・アレキサンダーの絵で一度出ている。一度というか、これがオリジナル版。今回出たのは、酒井駒子が訳して絵を描いた日本オリジナル版だ。僕は酒井さんの絵と物語が好きなので迷わず手に取ったのだけれど、この物語にはちょっと驚いた。

 

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