また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【BOOK NEWS】「本屋さんを支えたい。ブックストア・エイド基金」始まっています!

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©︎「ブックストア・エイド基金」メインビジュアルは、イラストレーション・デザインを惣田紗希さんが担当

 朝日新聞によると4月下旬の時点で全国で1000店以上の書店が休業中だそうです。元々、出版業界、古書店も含む書店業界は景気がいいわけではなく、このコロナ禍でさらに弱体化しているのは間違いないところ。そんな書店に対する支援の動きの一つとして作家の阿久津隆さん、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんらによって創設されたのが「ブックストア・エイド基金」です。映像などクリエイティブなブロジェクトが多いクラウドファンディングサイトMotion Galleryで行われています。

 

趣旨が載っているのでまずはそれを引用します。

 

このプロジェクトについて

新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が全国に発令され、出口のみえない外出自粛要請と休業要請の日々の中で、全国の書店・古書店を支援するため、有志で立ち上げたプロジェクトです。

 

 この文章も分かりやすい。

 

「ブックストア・エイド基金」は、わずか3日で1億円を集めたことでも話題の「ミニシアター・エイド基金」に影響を受けています。「ミニシアター・エイド基金」と同じように、みなさんの支援をクラウドファンディングで集め、存続のための新たな一手を模索中の書店・古書店の動きを止めないための緊急支援です。そのため「最たるリターンは書店・古書店の存続」とし、できるかぎり多くの金額を対象となる書店・古書店に還元します。

 

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【書評】小林信彦「生還」-脳梗塞で入院!闘病生活の中でも小林信彦は小林信彦らしさを失わない

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 作家の小林信彦が脳梗塞を起こし急遽入院したのは2017年4月のことだ。この本は同年11月から翌18年7月まで「週刊文春」に掲載された闘病記をまとめたものである。85年の人生でほとんど入院経験がなかった彼が綴る闘病生活、帯には「あたらしい闘病文学」と書いてあるが、こんな時にもその文章には小林信彦らしさが横溢している。

 実はこの入院騒動?入院→退院というシンプルなものではなかった。緊急搬送された急性期病院からリバビリのための病院に転院。やっと退院できたと思ったら3週間後、水を飲もうとして転倒し、左大腿部を骨折。別の病院に入院し手術。さらにリハビリ病院へ。さすがにこれで終わりかと思ったら2ヵ月後に今度はなぜか記憶がないままに骨折してしまう。もうこの経過を読むだけでもおもしろいのだが(すみません!)、小林信彦はただでは起きない。看護師やリハビリスタッフ、同病の患者たちへのシニカルな視線と物言いには不謹慎ながらも笑ってしまった。しかも、夢だか現実だか分からないような記述もあり、とにかくまぁ、これぞ小林信彦!って感じなのだ。

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【ドラマ】今だからこそ生まれた全3夜のNHKテレワークドラマ!今夜第1話放送!準備、収録、編集すべてリモート

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©︎NHK


 というわけでテレワークドラマです。準備、収録、編集とすべてリモート制作した3つのドラマをNHKが今夜から放送します。

 

 第1夜は満島真之介と前田亜季出演の「心はホノルル、彼にはピーナツバター」。緊急事態宣言でハワイでの結婚式が中止になったカップルがビデオチャットする話。本日23時40分から30分間。

 

 第2夜は小日向文世と竹下景子主演の「さよならMy Way!!!」。長年連れ添った妻を亡くした夫になんとその妻からビデオ電話がかかってきて…。明日5日23時15分から30分間。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!ぜひ読みたい!「フジモトマサルの仕事」。朝井リョウと原田マハの文庫化も(2020.5/2週)

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 「ゴールデンウィーク」改め「外にデンウィーク」真っ只中ですが、皆さん、いかがお過ごしでしょう?出版業界もどうなのかあぁ、なんだか今ひとつ新刊の出版も盛り上がってないような気もするけど。

 

 で、出た本。コロナブックスから「フジモトマサルの仕事」出ました。イラストレーターで漫画家のフジモトさん、村上春樹さんの期間限定サイト「村上さんのところ」のイラストが特に印象に残っています。フジモトさんのイラスト、いいんだよなぁ。僕は「ほぼ日」のなぞなぞのコンテンツで彼を知ったような気がします。回文など言葉遊びをモチーフにした単行本も出している多才な人です。

 

 そのフジモトさん、2015年に46歳の若さで亡くなられたのですが、この本は彼の仕事を通覧することができる嬉しい一冊。村上さんが巻頭言を書いて、森見登美彦さん他が寄稿しています。これはもう買い!!!

 

◯「ほぼ日」のなぞなぞコンテンツ、けっこう難しかった

◯フジモトさんのコミック「二週間の休暇」もよかったです

 

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【BOOK NEWS】講談社の特別連載企画「Day to Day」今日からスタート!辻村深月、恩田陸他50人以上の作家が日替わりで執筆!

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©︎講談社


 講談社と未来創造株式会社が運営する文芸ニュースサイト「TREE」での公開になる「Day to Day」。まずは編集部からのコメントを講談社のサイトから引用します。

 

「緊急事態宣言」が発令されて以降、作家と出版社にできることは何か、数年経っても、この時のことを忘れずに前に進める企画はないかと考え、「2020年4月1日以降の日本を舞台に、作家に1日ずつ掌編を書いていただく」という企画を立てました。テレビをつけてもSNSを見ても、コロナの最新情報がまず飛び込むいま、小説家の力で、読むことで、少しでもみなさんの心を明るくできますように。読書を愛するすべての方に、今日からはじまる物語を楽しんでいただけますように――。

 

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【書評】ソン・ウォンピョン「アーモンド」-感情をつかさどる脳の扁桃体が壊れているユンジェという少年の友情物語

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 韓国の映画監督ソン・ウォンピョンの初長編。国内で高い評価を受け、日本でも本屋大賞の翻訳部門の第1位に選ばれたばかり。新聞で大きな広告をうっているので気になった人も多いだろう。

 

 短いプロローグがあって、第1部。わずか7行の第1章で、ある殺傷事件の概要が語られる。母と祖母を含め7人の死傷者が出たその事件を「いつものように、無表情で」見つめていたのがこの物語の主人公ソン・ユンジェだ。タイトルになっている「アーモンド」は、脳にある扁桃体のこと。ユンジェは感情をつかさどるその部分が壊れていて「喜びも悲しみも、愛も恐怖も」ほとんど感じることができない。「感情という単語も、共感という言葉も」、彼にとっては実感を伴わない文字の組み合わせに過ぎないのだ。

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【コミック】第24回手塚治虫文化賞、マンガ大賞は高浜寛さん「ニュクスの角灯」に決定!田島列島、和山やま、長谷川町子さんも受賞!

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 24回を迎えた手塚治虫文化賞、今年のマンガ大賞は高浜寛さんの「ニュクスの角灯(ランタン)」に決まりました!パチパチパチ!!この作品、2016年に第1巻が出て去年の8月に完結した全6巻のコミックです。西南戦争で両親を亡くした主人公の少女が長崎の道具屋の売り子になってベルエポックのパリで成長していく明治アンティーク浪漫。第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門「優秀賞」も受賞しています。選考委員のマンガ研究家ヤマダトモコさんは「作者の新境地。完結の今こそ賞を」、同じく選考委員の女優杏さんは「史実を絡めつつ未来へ向かわせる物語」と評しています。高浜さん、デビュー以来、欧米で高い評価を受けていて既刊の多くがフランス語に翻訳されているそうです。すごい!

 

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