また、本の話をしてる

おすすめ本の紹介や書評、新刊案内など、本関連の最新ニュースを中心にお届けします。

【書評】コロナ・ブックス「フジモトマサルの仕事」-マンガからイラスト、なぞなぞ、エッセイまで彼の仕事を一冊に!

 

  平凡社のコロナ・ブックスの一冊。2015年に46歳で亡くなられたフジモトマサルさんの仕事をまとめたもの。大仰ではなくシンプルにまとめられていてなんだかとてもいい。手元に置いて時々ながめてフジモトさんのことを思い出したい。そんな一冊だ。

 

 僕がフジモトさんのことを知ったのはちょっと遅くて「ほぼ日」のなぞなぞのコンテンツのような気がする。このなぞなぞはなかなかおもしろかったし、一緒に描かれたイラストがとても印象に残った。その後が村上春樹の本のイラストだろうか?さらに「ちくま」の表紙。メインの仕事であるマンガを読んだのは遅まきながら2016年に出た「二週間の休暇」の新装版だった。この本には彼のマンガの仕事、なぞなぞと回文、イラストを使ったポスターやカレンダーなど他の様々な仕事、装丁と装画、エッセイなどが過不足なく収められている。

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!あの燃え殻の新作「すべて忘れてしまうから」!「本の雑誌」と「クロワッサン」の最新号も気になるぞ(2020.7/4週)

  出る本、前作の「ボクたちはみんな大人になれなかった」がすごくすごくよかった燃え殻の新作「すべて忘れてしまうから」(7/23)出ます。「ボクたちは〜」は2017年のマイベストの2位でした。なんだか不思議な小説。世紀末の東京の風景や気分や人々の思いがそのまま蘇ってくるような…。アマゾンの紹介文を読むと新作にも同じようなにおいがします。うむ、これも読むぞ!

ベストセラーになった『ボクたちはみんな大人になれなかった』の 燃え殻による、待望の第2作!

ほぼ忘れてしまった出来事だらけで、文章の途中で立ち止まってしまった。やっぱり書いておいてよかった。あの夜、編集のTさんに無理やり誘ってもらってよかった。だって良いことも悪いことも、そのうち僕たちはすべて忘れてしまうから。―――――本書より

いまはもうない喫茶店、帰りがけの駅のホーム、予定のなかったクリスマスイブ、入院した病院の天井、安いビジネスホテルの廊下、知らない街のクラブ、朝のコンビニの最後尾、新幹線こだまの自由席、民宿の窓でふくらむ白いカーテン、居場所のないパーティー会場――。

ふとした瞬間におとずれる、もう戻れない日々との再会。ときに狼狽え、ときに心揺さぶられながら、すべて忘れてしまう日常にささやかな抵抗を試みる「断片的回顧録」。

「ボクたちはみんな大人になれなかった」の僕の書評はこちら


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【ノンフィクション/書評】森まゆみ「明治東京畸人傳」-有名人から無名の人まで。その昔、谷中辺りには多くの畸人たちがいた!

 

 森まゆみといえばまず編集人であった地域誌『谷中・根津・千駄木』(通称「谷根千」)が思い浮かぶが、東京とそこで暮らす人々を描いたノンフィクションの傑作も多い。この「明治東京畸人傳」もすこぶるおもしろかった。

 

 明治から大正、昭和の初期にかけての谷中〜千駄木辺りの人物スケッチ(全25話)なのだが、何よりも驚いたのは、当時の谷中辺りがすごく元気のいい町で、おもしろい人がうじゃうじゃいた、ということだ。周辺には東大をはじめ学校が幾つもあり、下宿屋も多く、多彩な人物が集まったということもあるのだろうがちょっとすごい。登場人物にはサトウハチロー、幸田露伴、北原白秋、川端康成、三遊亭園朝など、 著名な人も多いのだが、昭和恐慌の発端となった渡辺銀行のオーナ ー「ヂエモン」や静座健康法の生みの親である岡田虎二郎、20世紀初頭にチベットまで出かけ仏典の原典を研究した「エカイさん」などの話がすこぶるおもしろい。

 

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【エッセイ/書評】ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」-EU離脱、緊縮財政なんかに負けない!英国のおっさんは愛おしいぞ!


 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が大ヒットしたブレイディみかこさんの新エッセイ。英国の子供たち、というか息子とその友だち界隈の話はすこぶるおもしろかったけれど、英国のおっさんたちの話もやたらとおもしろい。

 

 彼らは50代60代の労働者階級のおっさんだが、大きな背景として英国のEU離脱(ブレグジット)とずっと続いている緊縮財政がある。あくまで一般論だけど彼らはEU嫌いの右っぽい愛国者と見なされているらしい。そんなおっさん時々おばはんたちの類い稀なきおもしろ話!!

 

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【文学賞】発表!第163回芥川賞・直木賞(令和2年上半期)、芥川賞は高山羽根子「首里の馬」遠野遥「破局」、直木賞は馳星周「少年と犬」!

 芥川賞は3度目のノミネートの高山羽根子さん「首里の馬」と遠野遥さん「破局」に決まりました。高山さんの下馬評が高かったのですが、お二人ともよかった、よかった。パチパチパチ!

 

 コロナ禍で(たぶん)選考開始時間が早くなった今年上半期の芥川賞、直木賞。高山さんは3度目のノミネート。「首里の馬」は秋に発表される三島由紀夫賞の候補にもなっています。アマゾンから紹介文を引用してみます。

この島のできる限りの情報が、いつか全世界の真実と接続するように。沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。

 クイズを出題するオペレーター???なんだかよく分かんないけれどちょっとおもしろそう。沖縄の宮古島の話なんですね。期待!発売は7月27日の予定です。

 

◯「首里の馬」、冒頭の立ち読みできます。新潮社のページから。

 

 遠野さんは初めてのノミネート。「破局」は「改良」で文藝賞を受賞した後の第1作です。内容をアマゾンから。

私を阻むものは、私自身にほかならない。

ラグビー、筋トレ、恋とセックスーー
ふたりの女を行き来する、いびつなキャンパスライフ。
28歳の鬼才が放つ、新時代の虚無。

2019年文藝賞でデビューした新鋭による第2作。

 ううむ、少し軽めの小説のようにも思うのですがどうなんでしょうね?いずれにしてもよかったです。こちらはすでに発売されています。

 

◯なんと「破局」の冒頭20ページが河出書房新社の「Web河出」で公開されました。

 

【他の芥川賞候補】

◯石原燃「赤い砂を蹴る」

◯岡本学「アウア・エイジ(Our Age)」

 

◯三木三奈「アキちゃん」(未発売)

 

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!村上春樹の短編集「一人称単数」!ヨシタケシンスケの新刊はなんと2冊、原田マハ「アノニム」が文庫に!(2020.7/3週)

 

 さて、出る本。村上春樹、6年ぶりの短編小説集「一人称単数」(7/18)出ます。全8編!表紙は今のところ出ていませんねぇ。ただ、扉絵とカバー装画は漫画家の豊田徹也さんが描いたことが発表になっています。詳しくはこちらを!


◯「一人称単数」の詳細はこちらから


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【映像化】西川美和監督の新作は「すばらしき世界」。原作は佐木隆三「身分帳」、主演は役所広司。2021年春公開予定です

 
 「ゆれる」「ディア・ドクター」「永い言い訳」などの西川美和監督の新作製作が発表になりました。西川監督、ずっとオリジナル脚本だったのですが今回は佐木隆三の伊藤整文学賞受賞作「身分帳」が原作、映画のタイトルは「すばらしき世界」です。佐木隆三といえば映画にもなった「復讐するは我にあり」など犯罪をテーマにした小説やノンフィクションが有名ですが、この「身分帳」もそういう小説のようです。原作は講談社文庫から新カバーで7月15日復刊予定です。アマゾンの紹介文はこちら。

映画監督西川美和が惚れ込んで映画化権を取得した、『復讐するは我にあり』で知られる佐木隆三渾身の人間ドラマ!
映画『すばらしき世界』(2021年春公開予定)原案。
復刊にあたって、西川美和監督が書き下ろした解説を収録。

極寒の刑務所から出てきた男、山川一。軽微なものから殺人罪まで、決して少なくない前科を重ねた山川が、ついに満期で出所したのだ。
背中には派手な彫り物もある、だがその世界からはもう足を洗った。しかし戸籍もなく、母を知らず、こうして出所したのに会う手掛かりもない。そんな時、ある元テレビディレクターの目に山川の奇異な姿が留まる。「一緒にお母さんを探しませんか」--気が短く不器用極まりない男だが、どこか愛嬌があり、何よりこの社会でやり直したいと真面目に職探しを始める山川。しかしそんな男を黙って受け入れてくれるほど、社会は優しくないのだった・・・

刑務所から出て歩き始めた自由な世界は、地獄か、あるいは。
魂に迫る筆致で描く佐木隆三の名作が復刊。伊藤整賞受賞作。

 

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