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【書評】佐藤泰志「大きなハードルと小さなハードル」-なんとか輝きを取り戻そうとする男たちの痛々しさ

 ずっと読んできた佐藤泰志も文庫作品はこれで終わり、初期作品集を残すのみとなった。何だかちょっと寂しい。さて、この「大きなハードルと小さなハードル」は「秀雄もの」と呼ばれているらしい連作5作が第一部、その他の短篇2作が第二部という構成。

 

 さて、第一部、最初の「美しい夏」で主人公の秀雄は光恵という女性と暮らしているが、そのタイトルとは逆で全編を被っているのは、ギスギスとした何ともイヤな空気だ。そのほとんどは主人公秀雄が生み出している。次の「野栗鼠」では2人の間に陽子という三歳の娘がおり、表題作「大きなハードルと小さなハードル」では秀雄の重度のアルコール中毒が明らかになる。いたたまれないような家庭の雰囲気、少しも噛み合うことのない夫婦の会話、この連作にはこれまでの佐藤の作品にはあった、ささやかな喜びやかすかな希望さえ感じることができない。作者のいつもながらのリアリティに感心しながらも戸惑っている自分がいる。

 

 第二部はまったく違う主人公たちの話なのだが、やはり居心地の悪さというか読み心地の悪さがある。この本の男たちは常にいらだっているのだ。ラスト一作だけ少し明るいトーンがあるのが救いだが…。あがきながら、もがきながら、なんとか輝きを取り戻そうとする男たちの痛々しさに少々まいった。

 

○佐藤泰志の他の本の感想などはこちら

 

 

2011.7.12 妻の裂き織り、iichi内のショップ「糸糸のたね」に新作3点がアップされました。今回はいろいろ工夫もあるみたい。ぜひ、見てみてください。どうぞよろしく!

 

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