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【書評】佐藤泰志「黄金の服」-若者たちのけだるい夏を描いて見事な表題作

 3編収録。やはり芥川賞の候補にもなった表題作「黄金の服」が一番いい。「泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って」を繰り返す男女のひと夏の物語。主人公の義男は24歳、大学生協の書籍部に勤める彼は、その大学の学生である道雄や慎と毎日のようにプールで泳ぎ、夜はジャズバーで酒を飲んでいる。義男が惹かれているアキは離婚経験のある2つ年上の女。慎が心を寄せる文子もそこに加わる。リアルな会話と何かが起こりそうで起こらない日々。5人の造形の見事さと佐藤らしい巧みな表現で、いつの間にか物語に引き込まれていく。

 

 けだるい夏のけだるい毎日、やり過ごすように日々を消費していく若者たち。彼らには夢や希望はあるのだろうか?義男とアキの恋の行方は?ラスト、心を残しながらもすべてを受け入れる主人公の姿に共感する。この小説ではいたるところに作者の姿が透けて見えるような気がする。それは、珍しくついている「あとがき」のせいだろうか。

 

 「オーバー・フェンス」は職業訓練校を舞台にした話。タイトルにしてもラストにしても作者の意図があらわになり過ぎていて残念。これも芥川賞候補だというが、どうかなぁ。「撃つ夏」は入院中の男が主人公で、同室の男や友人とのやり取りがなかなかいい。

 

○佐藤泰志の他の本の感想などはこちら

 2011.6.8 今日は珍しく息抜き。原宿で「クーザ」を見る。シルク・ドゥ・ソレイユはやっぱりスゴいなぁ。読書は角田光代「夜をゆく飛行機」。

 

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