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【書評】保坂和志「ハレルヤ」-あぁ、花ちゃん!最後に残るのは不思議なほどの多幸感だ

 作者のことは知っていたし、おもしろそうな作家だなとは思っていた。でも、出会いはなかなか訪れず(読みたい!と強く思うきっかけがないと読めない)、このままなのかな、って感じだったのだが、NHK・Eテレの「ネコメンタリー」という番組を見て、激しく心を動かされ、猫が主役だという最新の小説を読んでみることにした。

 

 いやぁ、保坂和志、おもしろい。まず文体がいい。「。」の少ないブレスの長い文章の中で、作者は「思いめぐらすかのように」いろいろなことを書き綴っていく。過去に戻ったり、思いがけない話になったり。その自由さがうれしい。

 

  4つの物語が収録されているが、愛猫花ちゃんの最後の日々を描いた表題作と花ちゃんとの出会いを描いた再掲の「生きる歓び」が強く心に残る。保阪さんは、花ちゃんのことをドーンと真ん中に据えて書いているので、読むだけで悲しくなったりうれしくなったりするのだけど、結局、最後に残るのは不思議なほどの多幸感だ。生まれた時から片目は見えず、さらにもう片方の目も見えなくなり、晩年には胃にリンパ腫ができた花ちゃん。それでも彼女が楽しそうにしている描写に強くシアワセを感じてしまうのだ。

 

 この小説集は猫の話ではない。猫と人間の話だ。作者は花ちゃんとの諸々を通じて自らを見つめ直し、心というもの、言葉というものにも思いを巡らしていく。「言葉を使うから愚図になるにゃりよ」という表現の力強いこと!結局、彼は猫たちと生き、暮らし、その中で感じる様々な思いに救われているのだな、と思う。同時にそれは、読者にとっての救いでもある。保坂和志、さらに読む進めていきたい作家である。

DATA ◆保坂和志「ハレルヤ」(新潮社)1500円(税別)

 

◯ネコメンタリー、保坂さんの回はこちら

  

2019.1.18  今年はまだまだ手探り状態。去年からの懸案も少しずつだが前進。読書は吉田修一「犯罪小説集」 

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