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【コミック/感想】田島列島「水は海に向かって流れる」-マグマは10年前のW不倫、互いの子どもたちが出会って…

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 このコミック、雑誌「フリースタイル」の特集「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!」で2位になっていて、紹介文を読んでいるうちにすごく読みたくなった。2巻まで出ているがまだ完結はしていない。年末の「このマンガがすごい!」でも5位にランクインされていた。田島列島は知らなかったが2014年に出た連載デビュー作「子供はわかったあげない」が高い評価を受けていて、この作品は映画になるらしい。短編集も出ている。ううむ、絵がいいんだなぁ。どんな名作でもタッチが嫌いだと共感できないが、彼の絵はとても繊細で素晴らしい!!

 

 さて、物語。高校進学を機におじさんちに居候することになった主人公の直達。その家には親に内緒で漫画家になっていたおじさん(ニゲミチ先生)だけではなく、25歳のOL榊さん、榊さんの知り合いの大学教授成瀬さん、女装の占い師泉谷さんが住んでいた。一つ屋根の下の同居生活が始まるのだが、ふとしたことから榊さんは直達が10年前母がW不倫した男の息子であることを知ってしまう。それがこの物語の大きなマグマだ。直達は父の不倫の事実さえ知らない。榊さんは直達がそれを知ること、自分が不倫相手の娘だと知ることを望んでいない。しかし、直達は偶然にもその事実を知ってしまうのだ。

 

  隠しておきたいこと、言ってしまいたいこと、つい言葉に出てしまったこと…。心と心のすれ違い、どうしようもないモヤモヤ。しかし、その思いは2人だけには留まらなかった。周囲もどうしようもなく巻き込まれてしまう。こういう風に書くと、なんだかドロドロとした物語のように感じるかも知れないが、まったくそんなことはない。田島列島はユーモアを交えながらこの混沌を描いていく。人の心、その思いの隅々までを本当に細やかに表現していて見事だ。2人の関係はこれからどうなっていくのか?直達と榊さん、それぞれの両親との関係は?物語はまだ端緒についたばかりなのかも知れない。次巻は7月発売予定。これは本当に待ち遠しいぞ。
DATA◆田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社KCデラックス)1巻2巻各682円(税込)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

  

隠しておきたい事がある。

言ってしまいたい事がある。

 

 ◯「子供はわかってあげない」も読みたい!上下2巻

 

◯なんと映画になるらしい!

 

◯短編集もありますよん!

 

 2020.4.15 緊急事態宣言から1週間。このゆるゆるのツケはどこで出るのだろう?読書は村田沙耶香「丸の内魔法少女ミラクリーナ」。

 

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