ううむ、これはいいぞ!途中で胸がつまって、ちょっと泣きそうになった。坂本千明さんは名前は聞いたことがあったけど初めて。イラストレーターで「紙版画の手法を使い、書籍の装画などを手がける」と紹介文にある。
主人公のノラの黒猫は、自分は道端に転がっている石ころと同じだと思っている。
いしころは みちばたに ポツンとひとりじっとだまって そこにいるだれも それを きにとめないぼくも きづけば ポツンとひとりじっとだまって ここにいる
石ころも自分も小さな虫も雨もみんな同じ!誰もがその存在を気に留めない。これも紙版画なのか?その黒毛!ヒゲ!目!耳!鼻!手と足! 繊細な表現から生まれる坂本千明の黒猫!愛おしくなるようなその姿!
ずっと前に暖かくてやさしい大きな誰かが教えてくれた。恐ろしい敵に見つかってしまうから声を上げてはいけない、と。上げてもいいのは誰かを好きになった時、だけだと。だから黒猫はすべての言葉をカラダの奥に呑み込んで生きている。
おはよう こんにちは こんばんは
いただきます ごちそうさま
うれしい たのしい きもちいい
おやすみなさい またあした
みんな、みんな、声には出さず、すべてを呑み込んで暮らしている。そんな黒猫にある日ー
「こんばんは」
ここからは新しい物語の始まり。終盤、黒猫の声が感情がドドドドドドッと溢れ出す。そのシアワセ!その表現の素晴らしいこと!これはもう読んで感じてもらうしかない。坂本千明、すごいなぁ。ううむ。
◆DATA 坂本千明「ぼくはいしころ」(岩崎書店)1500円(税別)
◯坂本千明さんのブログはこちら!
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
おはよう いただきます きもちいい
呑み込んでた言葉と気持ちが溢れ出た。
2021.4.1 大阪府・兵庫・宮城に「まん防」適用。う〜ん「まん防」じゃ何も変わらないと思うけどなぁ。読書はカズオ・イシグロ「クララとお日さま 」。