いやいやいや、いやいやいやいやいや、このエッセイはすごい。内澤さんは「本の雑誌」で連載を持っていて名前は知っていたけど作品はちゃんと読んだことがなかった。イラストレーターでもある人だから、このエッセイに収録されたイラストは表紙を含めて彼女自身が描いたものだ。うむ、このイラストも好き!
で、「カヨと私」、小豆島に住む内澤さんの元にやって来た雌ヤギのカヨと彼女の交流記だ。「家の周りの雑草を食べてもらうため」に飼うことにしたカヨなのだが、飼った途端から思わぬ展開に。っていうか、何だかすごいんだわ、内澤旬子!僕がもしヤギを飼ったとしても絶対にこういうことにはならない。当たり前か。とにかく、彼女がいろいろとカヨに話しかけ、カヨの要望に応えているうちに、この1人と1匹はとんでもない関係になってしまう。あとがきで内澤さんは最初カヨは「半分人間のようになって私に依存」して来た、と書いているのだが。
発情しちゃったカヨのために雄ヤギを探しに岡山まで行っちゃう話がとてもいい。しかし、ここから話はさらにすごいことになっていく。赤ちゃんが生まれる、知人からやって来るなどして内澤さんが飼うヤギはどんどん増えていっちゃう。タメとかチャメとかまさおとか金角とか銀角とか。みんななんだかユニーク?なキャラクターで…。親子のはずが夫婦に…うん?いやぁヤギっておもしろいなぁ。ちょっと飼いたくなった。飼わんけど。
で、増えていくと人間関係、じゃないヤギ関係はなかなか複雑になり、内澤さん自身もえらいことになって来る。「私はもう半分くらいヤギなのだ。カヨだって半分くらいは人間なんだし」ワールドに突入して、なんだかもう大変。ヤギワールドに取り込まれちゃう内澤さんの運命やいかに!これってもう、ヤギハーレム?違うか。なんかもうコワイような羨ましいような、幸せのような不幸のような。そんなスゴい世界の話です。それにしても内澤旬子の柔らかいけれど時々凄みを感じる文章、いいな。必読!!
◆DATA 内澤旬子「カヨと私」(本の雑誌社)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)