まずはタイトル。同じ食材を違う調理法で作った盛り合わせ料理、のことらしい。なるほど!表紙のビジュアルもそれを端的に表現している。
さて、物語。その真ん中にあるのは主人公である小説家の志絵と娘の理子、シングルマザーである志絵の若い恋人・蒼葉の話だ.。2度の離婚経験がある志絵は娘の理子と共に暮らしているが付き合い始めた大学生・蒼葉も2人と一緒に住むという提案を娘にする。理子はそれに対して自分は家を出て志絵の元夫と共に暮らす、という選択をするのだが…。志絵は娘を溺愛している。理子が自分の元を去ることがとてもとても悲しく寂しい。それでも蒼葉との暮らしは大切にしたいのだ。
最初に「その真ん中にあるのは」とあえて書いたのは、志絵が小説家仲間のひかりや和香と話す様々なこと、恋愛論や親子の関係、料理のこと、創作の話などなど。さらに、理子や元夫や蒼葉と話す諸々のこと。その一つ一つがメインのストーリーとシンクロしたりしなかったりしながら進むので、魂のごった煮感がすごくて、メインのストーリーがやや希薄に感じたりしたからだ。
金原ひとみの小説は、いつも饒舌ではある。そこには確かに多くの共感もある。ただ今回、放たれる言葉が多すぎてちょっと咀嚼できない部分も多かった。ストーリーに収斂しきれていない感じ。まぁそれがデクリネゾン、ということなのかもしれないが。コロナ禍で展開されるこの物語、金原シェフの渾身のレシピをぜひどうぞ!
◆DATA 金原ひとみ「デクリネゾン」(集英社)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)