川上未映子、話題の最新刊。読売新聞で連載された新聞小説だ。帯にノンストップ・ノワール小説とあるように、今までの彼女の小説とはちょっと違う。物語性がとても強く、その世界へグイグイと引き込まれていく。
2020年の春、主人公の花はずっと以前に一緒に暮らしていた黄美子さんという女性の名前をニュース記事で見つける。彼女は若い女性を監禁し傷を負わせたらしい。そこから物語はその20年以上前の日々へと戻っていく。
母と共にずっと貧しい暮らしを続けて来た花は17歳の時に母の知り合いだった黄美子さんと出会い、家を捨てる。彼女たちはスナックを始め、そこで知り合った少女たち、蘭と桃子と4人で家族のように暮らすようになる。
物語が3分の2を過ぎた辺りで花がこんなことをつぶやく。
「みんな、どうやって生きているのだろう」「今日を生きて明日もそのつづきを生きることのできる人たちは、どうやって生活しているのだろう」「わたしがわからなかったのは、その人たちがいったいどうやって、そのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手にいれたのかということだった」
少し長い引用になってしまったが、花の心の奥底には常にこういう思いがある。この頃、花はすでにみんなとの「家」を守るためにヤクザのシノギのようなものに手を出し金を稼いでいた。
これは彼女の17歳から20歳ぐらいまでの話なのだが、花は何かにすごく秀でているわけではないのだが、自分たちの「家」を自分の力で守りたいという強い思いがある。それはずっとまともに生きてこられなかった女性のしがみつくような思いなのかもしれない。そのパワーにただただ圧倒される。社会の底辺で生きていて、犯罪に手を染めることになる花なのだけど、誰も彼女を悪人とは呼ばないだろう。
彼女と関わる映水(ヨンス)、ヴィヴさん、琴美さん、そして、いろいろのシノギのリアル。金を求めて日々を生きる人間たちの暮らし。「黄色い家」は川上未映子の小説とは思えないほどの強烈なクライムノベルである。なんだかパワフルでとんでもないシノギの日々はある人間の死によって崩壊へと突き進んでいく。
これは彼女の17歳から20歳ぐらいまでの話なのだが、花は何かにすごく秀でているわけではないのだが、自分たちの「家」を自分の力で守りたいという強い思いがある。それはずっとまともに生きてこられなかった女性のしがみつくような思いなのかもしれない。そのパワーにただただ圧倒される。社会の底辺で生きていて、犯罪に手を染めることになる花なのだけど、誰も彼女を悪人とは呼ばないだろう。
彼女と関わる映水(ヨンス)、ヴィヴさん、琴美さん、そして、いろいろのシノギのリアル。金を求めて日々を生きる人間たちの暮らし。「黄色い家」は川上未映子の小説とは思えないほどの強烈なクライムノベルである。なんだかパワフルでとんでもないシノギの日々はある人間の死によって崩壊へと突き進んでいく。
花という女性のキャラクター、彼女が望んだ擬似家族のような暮らし、これらがこの小説の大きな魅力だと感じる。さらに、黄美子という女性の不思議さも物語の重要な要素になっている。それだけに、このラストは救いだ。金を求め、しかし最後には目の前にある金の意味さえも分からなくなってしまう花。ここに登場した人物のことを僕はずっと忘れないだろう。というか忘れられない。これは読む者に大きなインパクトを残す物語だ。 ◆DATA 川上未映子「黄色い家」(中央公論新社)