出る本、絲山秋子「神と黒蟹県」(11/13)出ました。絲山さんの新作はとにかく楽しみ。今回は黒蟹県という架空の場所を舞台にした物語。彼女は群馬とか富山とかいろいろな場所を舞台にちょっと不思議な感じがする物語を紡いで来ていますが、今度は絲山さんがゼロから作り上げた場所、というのが気になる!あと、おなじみ?の「神」も。アマゾンの紹介文を!!
「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。
絲山さんの小説、とにかくおもしろいので読んだ方がいいと思いますよ。ぜひぜひ!
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絲山さんといえばデビュー20年で「文學界10月号」で特集が組まれているので興味がある方はこちらもぜひ!辻原登さんとの対談、田中和生さんによる絲山秋子論、編集部による絲山さんへのインタビューという嬉しい内容。新作のいろいろが詳しく分かります。
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