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【書評】高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」ー芥川賞受賞作!職場という狭い空間で起こる人間関係と人間自身のリアル!高瀬隼子はやっぱりすごい!!

 

 芥川賞受賞作。食品などのラベルパッケージを作る大きな会社の埼玉支店という設定。病弱で休んだり早退したりが多く仕事もできないが周りからはチヤホヤされている芦川さん、1年後輩で芦川のことがどうも苦手な頑張り屋の女性、押尾さん、支店に転勤してきたばかりの芦川さんの1年先輩にあたる二谷という男性、この3人がメインの登場人物だ。

 実は二谷と芦川は付き合っている。押尾と二谷は気が合うらしく2人でよく飲んだりもする。そこで押尾は芦川さんの陰口を叩くのだが二谷はそれを否定しない。二谷が芦川と付き合っているのは弱者だからで、芦川のすべてを受け入れてるわけではないのだ。芦川さんは早退した翌日に手作りのお菓子を差し入れ、好評だったのでそれから頻繁に作ってくるようになる。物語の語り手は二谷と押尾だけで作者はそれを一人称と三人称を使い分けながら描いていくのだが、そこで醸し出される「職場」という場所の気持ち悪さ、そして、芦川という女性の恐ろしさが際立っている。

 

 後半、芦川さんのお菓子をめぐる騒動が起こる。これには二谷と押尾が絡んでいるのだが、この2人の感情も歪んでいて、まさに人間の複雑さ、奇妙さ、不気味さが感じられていろんな意味でおもしろい。「いい子のあくび」を先に読んでいるがやっぱりすごいぞ、高瀬隼子は。それにしてもこのタイトル!インチキくさくていいわぁ。
◆DATA 高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」(講談社)

 ◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)

 
◯高瀬隼子 、他の本の感想などはこちら!!


 

 

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