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【書評】坂元裕二「それでも、生きてゆく」ー2011年放送の問題作、全11話のシナリオ完全版。これは本当にすごいドラマだったなぁ。シナリオを読んで改めて思った


 2011年に放送された坂元裕二脚本のドラマ「それでも、生きてゆく」全11話のシナリオ完全版。ドラマはもちろん見ている。見てるのだけど、いやぁ〜こんなのよくやったなぁ、と改めて驚いた。巻末の座談会でも企画を通すのに難航した、と話題になっていたが、それにしてもなぁ。いやいやスゴい。僕はこのドラマ、全体の流れと部分部分は覚えていたのだけど細部はかなり忘れていて、後半の核心部分がスッポリ抜け落ちていたので驚いた。

 これは幼い妹を友人だった「少年A」に殺された兄の洋貴とAの妹である双葉の物語だ。同時にこのドラマは加害者家族と被害者家族の物語でもある。加害者家族が世間からつまはじきの目にあうのは理不尽であるが起こり得ることだ。同時に、被害者家族もまた人々から特別な目で見られ、大きな喪失感に苦しみ続ける。さらに洋貴には「あの時自分が…」という大きな後悔がある。この事件は中学生が幼児を殺したという特殊性もあり注目度もまた段違いだったという側面もあった。

 

 事件から15年後、ある思いを抱いて洋貴の元を訪れた双葉は彼の父から兄が8年前に医療少年院を出たことを知らされる。その兄の「今」も描かれるのだが、メインとなるのは互いの家族の日常と彼らが抱えている思い。そして、洋貴と双葉の出会いとその後のつながりだ。重いテーマのドラマであることは間違いないが2人が互いに惹かれ合い交わす会話には雨空の中に奇跡的に訪れる短い晴れ間のような救いがある。坂元裕二らしさが漂うその会話のリアルとユーモア!!まったく逆の立場ではあるが2人には事件のために人生の大切なものを失ってしまったという共通の思いがある。第2話のラスト、W杯での日本のゴールシーン。そんな時、気持ちを爆発させることができなかった2人の会話

洋貴「僕ら…」「この先、ああいうのってあるんですかね」
双葉「ああいうの…」
洋貴「やったぁって思って、こう、ガッツポーズしたり」

 いつまでも彼らは何かに追われている。そして、そんな彼らに追い討ちをかけるように…。白眉は第5話の洋貴の母・響子の長い独白。最終回はすべてがいい。坂元裕二×満島ひかり×永山瑛太などの座談会、書き下ろしのあとがきも素晴らしい。

◆DATA 坂元裕二「それでも、生きてゆく」(河出書房新社)

 

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