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【書評】梨木香歩「椿宿の辺りに」-痛みを発端に物語が始まる、痛みの向こう側に不思議な世界がある

 初めての梨木香歩がこの新作でいいのかと思いながら手に取ってしまった。以前から彼女は独特の世界を持っているような感じがしていて、手を出せないままでいたのだ。

 

 発端からおもしろい。右腕に激痛が走った主人公の男、急いでペインクリニックに駆け込むと、三十代ながら五十肩という診断を受けてしまう。さらに、連絡を取った従妹も股関節の痛みに苦しんでいる。痛みの連鎖!?
主人公の男の名前は山幸彦、従妹の名前は海幸比子だという。古事記の山幸彦・海幸彦の伝説とつながっているのか?そしてもう一人、実家の店子である鮫島氏の名前は宙幸彦だ。

 

  山幸彦は、従妹の勧めで痛みを治すため仮縫という鍼灸院を訪れる。そこで不思議な能力を持つ亀シという女性と出会い、2人で実家がある椿宿の辺りに向かうことになる。山幸彦の亡くなった祖父藪彦から亀シへお告げがあった。実家に行き稲荷に油揚げを供えること、それが痛みの治癒にもつながるというのだ。

 

 さてさて、椿宿で彼らを待ち受けているものは?空き家になった実家とその土地にはいったい何が隠されているのか?「痛み」を発端に物語が動き、さらにそこで起こったこと、分かったことが山幸彦たちを非日常へと運んでいく。そのおもしろさ!その不思議さ!独特のユーモアを交えて語られるこの小説のことは時々思い出すことになりそう。何年かに一冊はあるそんな物語だ。

 

DATE◆梨木香歩「椿宿の辺りに」1620円(税込)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

痛みが導くその場所には

見知らぬ世界がありました。

 

2019.8.20 さてさてお盆ウィークも終わりましたね。少し涼しくなってきた?読書は「原田マハの印象派物語」がそろそろ終わるところ。

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