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【書評】チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」-これは世界中のすべての女性の物語だ

 韓国ではもちろんのこと日本でも大ヒットしている話題作をようやく手に取った。ううむ、もう少し早く読めばよかった。この小説、ちょっと前に書評をあげた川上未映子の「夏物語」ともリンクしていて、男女を問わず、今多くの人に読まれるべき物語だ。

 

 まず注目すべきは文体だと思う。あ〜この人、こういう書き方をするんだ、と思いながら読んでいくと最初の章の終わりで、これは精神科に通う主人公キム・ジヨンの担当医によるカウンセリングリポートの形で書かれていることが分かる。変に情緒的にならない表現がまさにこの物語にピッタリなのだ。ここでもうチョ・ナムジュという作家の才能を感じる。

 

 「82年生まれ、キム・ジヨン」は1982年に生まれ、2015年に33歳になった一人の女性の話だ。ここには彼女が韓国という国で生まれ、生きてきた人生の「すべて」が「まるごと」描かれている。儒教の国であるとか男子には徴兵制があるとか韓国独自の理由もあることはある。しかしこの物語は、国の違い、時代の違い、文化の違いなどを超えた「世界中のすべての女性の物語」であることは間違いない。

 

  冒頭2015年秋のキム・ジヨンは心を病んでいる。その後、彼女が生まれた1982年へと話は戻り「歴史」が語られていく。それは女性たちの絶望の歴史だ。チョ・ナムジュはリポートという形を巧みに利用しながら、その絶望を淡々と描いていく。ここでそれを羅列することはあえてしない。というかしたくない。感想だけ読んで、読んでしまったような気持ちになってしまっては困るのだ。いくつかを切り取るのではなく「まるごと」を感じてもらいたい。そのためには読んでもらうしかない。

 

 読んだあと、多くの女性たちはこれはまさに「自分のこと」だと思うだろう。男性はどうだろう?韓国では反発もあったと聞いた。フェミニズム文学は女性を差別するこの世界をキリキリキリと鋭い言葉でこじ開けていく。そのためには女性はもちろんのこと男性も読んで、自らの認識を改めて欲しい。というか、知ってることなんだよね。知ってるのに男たちは「そこ」にいたいのです。

 

 冒頭で自らを失ったキム・ジヨン。彼女が自分自身を取り戻し、伸びやかに晴れやかに生きていく、そのための責任を僕らは負っている、そんな気がする。
DATA◆チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」(筑摩書房)1500円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

キム・ジヨンは

あなたで私でみんなだ。

 

2019.9.4  9月になって大きなコンペも始まって、少しだけエンジンがかかる。読書はブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」。なんだかいろいろ繋がってる。

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